2006. 7. 8〜9
山こじ通信vol.16
八ヶ岳
(赤岳2899m・横岳2829m・硫黄岳2760m)



中央線の汽車が甲州の釜無谷を抜け出て、信州の高台に上り着くと、まず私たちの眼
を喜ばせるのは、広い裾野を拡げた八ヶ岳である。 全く広い。
そしてその裾野を引きしぼった頭に、ギザギザした岩の峰が並んでいる。
 八ヶ岳という名はその頭の八つの峰から来ているというが、麓から仰いで、そんな八つ
を正確に数えられる人は誰もあるまい。
芙蓉八朶(富士山)、八甲田山、八重岳(屋久島)などのように、山名に『八』の字をつけ
た例があるが、いずれも漠然と多数をあらわしたものと見なせばいいだろう。
克明にその八つを指摘する人もあるが、強いて員数を合わせた感がないでもない。
詮索好きな人のために、その八峰と称せられるものを挙げれば、西岳・編笠岳・権現
岳・赤岳・阿弥陀岳・横岳硫黄岳・峰の松目。
 そのうち、阿弥陀岳・赤岳・横岳あたりが中枢で、いずれも二千八百米を抜いている。
二千八百米という標高は、富士山と日本アルプス以外には、ここしかない。
わが国では貴重な高さである。 
この高さがきびしい寒気を呼んで、アルピニストの冬季登山の道場となり、この高さが裸
の岩稜地帯を生んで高山植物の宝庫を作っている。
                                 
                                深田久弥「日本百名山」より


7月8日
ついにメジャーデビューの日が来た。
山こじは山行きで出会った人達にベテランとよく勘違いされるのだが、
本当は「ただのマニュアル人間」「耳学問」なのである。
                 (今は雑誌やインターネットがあるので目学問?)
しかし「見たくれ登山家」にもそれなりにプライドがあり、ましてや体力の限界の前に膝痛
を起こすようでは、あまりにも情けない。 
だから、スクワットetcを毎日行い、自分なりに足を鍛え上げてきた。 
         そして、ついにこの日が来たのである。

21時過ぎ、いつもの様に夜中の出発だ。 夜のうちに登山口の美濃戸口まで走って現地に着
いてから仮眠を取るつもりだ。 
中央高速を渋滞も無く快調に走っていると八ヶ岳Pを過ぎた辺りで、大型貨物が車線をふさい
だので車線変更をした瞬間、目の前10mくらいに白い物体と血の海が、
    「あ〜〜間に合わない〜!!」と思う間もなく跨いでやり過ごす。
その瞬間に考えたことは
   「ブレーキは間に合わないし後続の車が危険」
   「血の海を通過したので急ハンドルはできない」。 
たぶん鹿か何かを大型車が撥ねたのであろう、何事もなく通過できて「ほっ」とする。 
諏訪南ICで料金所の人に報告した。早く除去しなければあぶないからだ。
田園風景を走り、観光地でもありペンションや別荘地の原村を通り美濃戸口に到着。(00:20)
早速、仮眠を決め込む。 
携帯のアラームで起床。(05:00)
美濃戸目指して出発。(06:00)   美濃戸着。(06:45)
宿泊客はここまで林道を走って来られるのだが、テント泊なので、朝一番からの林道歩きで体
力を消耗してしまう。

 
      
美濃戸から見上げると雨雲が低く赤岳どころか山の姿も見えない。 
「降ったら降ったで何とかなるさ」と、とりあえず出発。(07:00)

行者小屋までの道では2〜3のパーティーと抜きつ抜かれつという感じで、お互いに励みにな
る。 開けた川原に出た頃、前方の雲が切れ赤岳が顔を覗かせた。 
「今日はもう2度と無いチャンスかも知れない」と写真をとる。
 


やがて発電機の音が聞こえてきて行者小屋に到着。(08:10)

 

行者小屋では50人はいるであろう、さまざまな団体やパーティーの人達が休憩していた。
さすがに人気がある。 山こじのような大きなザックの人達は少ないが、稜線には山小屋があ
るので、小屋泊まりのリッチな登山(?)なのだろう。

ここで、どの道を選ぶか迷っていて出発前まで決めかねていたのが嘘のように、
すんなり文三郎道に決定! 
この先の行程を考えたら、とても阿弥陀岳なんかに寄る余裕なんか無いし体力がもたない。 
やはりザックの重さはスタミナを半減して行動力をオバチャン並みに(失礼)してしまう。 
文三郎道とて決して楽な訳ではないのだが、確実に高度が稼げるし中岳の余計な登りで体力
を使わないで済む。 まだまだ道中は長いのだ。
植樹帯の中を歩き出し高度が上がるにつれ、やがて森林限界になる。 

  

ここから、ぽちぽちと高山植物が顔を出してくる。 
階段やはしごのつらい登りの後の一服の清涼剤のように可憐な姿をみせている。 

 

 

やっとのことで、分岐の稜線にでて、いよいよ赤岳の核深部の山頂裏手の岩場に取り付く。
ここで、やたら元気のいいヤンキーの兄ちゃん(本物の外人)に道を譲る。
ヤンキー兄ちゃんも高山植物を見るや、カメラに収め満足そうだ。 
しかし、装備がほとんど無いヤンキー兄ちゃんグイグイ登っていき、とても付いていけない。
やっと、追いついたと思ったら、漢字で書いてある道標が読めずに悩んでいた。 
道標は「↑赤岳山頂」と書いてあるのだが、外人には分岐で悩むことになる。 
せめて「Peak↑」くらいは欲しいところだ。 
山こじ『Left!』と言って教える。
岩場を腕力で(これには自信あり)やり過ごし、山頂到着。(10:20)

 

 

山頂には20〜30人位の人達が休憩していた。
 ここで山こじお決まりの頂上での「乾杯ビール」を買う為に赤岳頂上小屋へ寄る。 
アルバイトの明るい青年と可愛いお嬢さんとしばし歓談する。 



なんでも「山を降りる事ができるのはバイトが終わった時」だとか。
 がんばれ! 青年諸君! 
  若い時の体験は決して無駄にはならない!
  経験という種は将来の糧となる!!


ここからは、景色をご馳走に稜線歩きだ。(11:00)
ザレた道を赤岳展望荘へと下り、岩だらけの道や岩場を登っては降りるを繰り返し、地蔵ノ
を通過。

 

 

しかし、横岳の前後の岩場には正直まいった! 四つん這いになると、ザックの荷が全部
背中にかかるので、とても苦しい! 

 

 

しかし、こんなことでヘコたれていては北アルプスの大キレットのお話にもならないと踏ん張
る。 台座ノ頭付近は、さすがに風が強い!帽子が飛ばされそうだ。
                             (ズラじゃなくてよかった)
 
 

 

ザレた道を下り、やっとのことで硫黄岳山荘に到着。(13:15)

 

ここでも、やっぱりビールで乾杯! そろそろ小屋泊の人達がチェクインしはじめている。
 「いいな〜」 しかぁ〜し、山こじにはまだ先がある。 
目の前の硫黄岳を登らなければ、赤岳鉱泉に着かない! 
最後の頂を目指して出発!(13:30)

 

「まいった!・・・」 
先が見え過ぎていて、疲れた体は一向に前に進まない。 ケルンがあるので、ひとつをワンピ
ッチと思って頑張っているのだが最初だけで、あとはケルンの間で2〜3回立ち止まるほど
だ。 とうとう後続の人に追いつかれ道を譲るハメに・・・。
「う〜〜屈辱だ〜〜!」  
 ヘロヘロなって山頂到着。(13:55)





頂上はなだらかだが風が強く、北側の爆裂火口は大迫力だ!
                     (落っこちたらバンジィ〜どころでは済まない)
ここで年配のご夫婦と出会い話しがはずむ。 
なんでもご主人は100回以上もこのコースを歩いているそうで、奥様も20〜30回は歩いている
らしい。 ご夫婦の散歩コースなのだそうだ。 それもそのはず、美濃戸から20〜30分で自
宅らしい。 幼い頃から気が向くと歩いたそうだ。 
ただのオバチャンと思ったらとんでもない見当違いだ。 

 

 

(14:10)赤岳鉱泉にむかって下りはじめる。 最初はなんとかご夫婦に付いて行こうと頑張っ
たが、ザックをはずませるような元気な下り方は出来ない相談なので、次第に差が付いてきて
九十九折の2〜3段下を歩いているのが見えたっきり会うことは無かった。
バテバテのヘロヘロで赤岳鉱泉に到着。(15:30)
 
 

すぐにテン場の手続きを済ませ、テントを設営。 
なんとか雨の落ちてくる前にテントの中に落ち着き食事の準備をしながら、
今日の自分の頑張りに乾杯!(今日何本目?)
食事を終え、何時の間にやら眠ってしまった。  たぶん就寝は(18:00)。
 

7月9日
朝というか、まだ夜中の3時に寒さで目が覚めた。 まだ辺りは真っ暗だ。 もう一度寝ようとす
るが、4時には諦めて食事の準備をはじめる。
空が今にも泣き出しそうな気配だ。 
しだいに明るくなってきたので撤収を開始すると、とうとう降り出した。 
大慌てでテントをたたみ、やっと小屋の軒下で一服。 
小屋では食事の真っ最中らしく賑やかだ。 
話す相手もいないので、出発。(06:20)
沢を何度も渡り、といっても頑丈な橋が掛けてあり増水時も安心だ。 
やがて、昨日見覚えのある美濃戸山荘に到着。(07:35)
ここで登山の終了を一人で乾杯!(おいおい朝からかよ)
小屋の主人との話が弾み、つい長居をしてしまう。
 山荘出発。(08:25)
 美濃戸着。(09:00) 
駐車料金を支払う時に店主
「いちいちチェックしていないからそのまま行っちゃえばいいのに」
と言われたが、山こじ、そんなことはできません!
                                           (きっぱり!)
店主
「登山はドアtoドアだよ!」
                                    と言われ見送られる。(09:30)
中央高速を快調に走り、予定通り無事に帰宅。(12:00)
   やっぱ、山はいいな〜。

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