2008. 6. 14
山こじ通信vol.28
阿弥陀岳南稜(2805m)


真ん中の角の出っ張っている所がP3


山行き行程(日帰り 2008.6.14) 撮影+小休止含み 9時間57分

・・・05:20・・・・・・・・・・・05:59・・・・・・・・06:47・・・・・・・・・・08:29・・・・・・・・・10:16・・・・・・・・・・・10:24
船山十字路(0.39)分岐(0:48)沢より脱出(1:42)鹿ノ角(1:47)稜線に復帰(0:08)立場山 

・・・・・・10:34・・・・・・・・・11:11・・・・・・・・11:53・・・・・・・・12:18・・・・・・・・・12:40〜13:13・・・・・・・・・・・・
(0:10)青ナギ(0:37)無名峰(0:42)P3基部(0:25)P3上部(0:22)阿弥陀岳頂上(0:06)

・・・13:19・・・・・・・・・・15:50
魔利支天(2:31)船山十字路


そもそも、バリエーションとは何たるか! 
  迂闊な自分の行動について考えなければならない
変な書き出しで始まったが、
  今回はやってはならないミスを仕出かしてしまった!

地図の表示では稜線を乗り越す所を安易に上に向かうのだからと、沢の上流に向かってしま
った。
(渡渉した先に左右に矢印⇔があり、右は沢の上流をさしている。 正解は左で、一見下流に
向かうみたいだが、稜線を乗り越し旭小屋に向かうと思われる。)
幸いにも時間が早かったのでそれなりに沢歩きを楽しむ事ができたが・・・。
でも、狙ってやったのではないので、一応は反省材料として今後は気をつけなければ遭難に繋
がる重大なミスである。
  読図は慎重に分岐等はさらに丁寧に! 

恒例のETCの割引に合わせた前夜発で八ヶ岳へと向かう。 
今回は阿弥陀岳南稜なので船山十字路を目指す。 ちょっと分かりにくい道だったが無事に
到着。 車中で仮眠をして朝を待つ。
船山十字路は車道として考えるとT字路である。 
たぶん昔は山道で十字路だったのだろうが、今は百葉箱がある側は獣道みたいで人は歩いて
いないみたいだ。

 

夜が明けた、やはり高原は寒い! 震えながら朝食を食べ、準備を進める。 
今回は自炊道具すら持ち歩かないので、ザックが軽い! 水2リットルとコンビニの弁当・合
羽・登攀の道具である。
ゲートのある林道とは違う方向の立場川本谷側林道を歩き出す。05:20

ほどなく「八峰 阿弥陀聖水」と札のある水場だ。
この先も、草の絨毯の気持ちの良い道が続く。

 

<立場川本谷の彷徨>
ガイドによれば船山十字路から45分位で旭小屋だ。 時間も丁度それくらい経っている。 
前方に立場川本谷が見え、渡渉する。 渡渉と言ってもまだ幅は3m位だ。 
渡りきった先に標識がある。
なになに・・・「○○○⇔○○○」 さっぱり分からん!
左右ともに矢印があり文字が見えないので解読不能だ。 
あまり深く考えず、沢の上流が登山道だと思い込み右に道を取る。05:59


渡渉した後、右(上流)に向かったのが間違いの始まり始まり・・・

立場川本谷の右岸を歩く格好だ。
(川岸の左右の判断は水の流れる方向を向いて右・左と決める)
ここからは結構気持ちの良い沢歩きだ。 しばらく行くと大きな堰堤が行く手を塞いでいる。 
向こう岸に渡渉してルートを捜すが見当たらない。 再び渡渉し直して辺りを観察すると、トラロ
ープを発見! ルートはこちらが正解だった。
しかし、行けども行けども稜線に登る道が出てこない。河原の石のだんだんでかくなってくる
し、そろそろ靴を濡らさないで渡渉するには困難になってきた。 
何回目の渡渉か分からない位、右に左に行ったり来たりしながら上流に詰めてきたが、川の
真ん中の濡れた石に着地する時に転倒! 
とうとうやってしまった! 幸いにも怪我はなかったが、ちょっとヤバイ雰囲気になってきた。
(アドレナリン大放出!!)
 誰も通らない沢で遭難しても発見など期待できない。 
(この頃には道を間違えた事に気づき始めていた。)
稜線を登るきっかけの道はない物かと捜しながら歩いていると、有りました!
これで沢歩きから脱出できる〜♪

 


今思うと道ではなく、踏み後だよネ
 

やっとの事で沢から離れ、登山道らしくなってきた。06:47
・・・最初は赤テープやペンキマークがあるのだが、・・・それも次第に数が減り、・・・だんだん怪
しくなってきた。
枝に空き缶が刺してあったり、砂防ダムの工事で小屋掛けした痕跡があったり・・・、それでも
人工物があるうちは良かったが、ガレた所を上からの落石に注意しながらトラバースしたり、そ
うこうしているうちに熊の糞を発見してしまった!

本気かよ〜〜●△◆○★▼!!
  (本気と書いてマジと読む)
熊鈴くらいの小さな音では心もとないので、5秒毎に「ホォッ」と高い声を出しながらの彷徨がは
じまった。08:29
 


落石も滑落も日常茶飯事のスリル満点のトラバース

後で考えてみたら「鹿ノ角」と呼ばれている大ガレをトラバースしていたみたいだ。
結構高度も稼いで、反対側の稜線に目を向けると見覚えのある形の山が・・・。
同定してみると、あれはどう見ても、編笠山だ。 するとこちらは権現岳となる。
となると正面は西岳・・・、立場山のすぐ近くにいるみたいだ。 あと100mも無い位で稜線に出
られそうなので、ペンキマーク探しを止めて、直登することに決定!
でてきた所が此処。10:16 

 

快適な稜線歩きを始めてすぐに立場山(2370m)に到着。10:24 
目指す南稜の全景阿弥陀岳の頂上がでっかく見える。やっと予定のコースに復帰出来た。
 無名峰付近に先行者がいるのを発見。今日始めての登山者を見て、何だかホッとした。

青ナギより南稜核心部

立場山から少し下り、青ナギと呼ばれる所に到着。10:34
立場川本谷側はザレているのに広河原本谷右俣側は普通の山肌をしている。不思議な地
形だ。 この辺りはビバーグの適地らしく焚き火の跡がある。
余計なアルバイトをしたせいで重い足取りで無名峰(2540m)に到着。11:11


無名峰と言う名前とは・・・如何なものか・・・

先行者はP1付近を歩いている。 時間にして10分位の差だ。息を整える程度の休みしか摂ら
ずに先行者も頑張っているみたいで、なかなか追いつかない。
先行者が休憩をしていた所に到着したら、そこはP3の基部だった。11:53
とうとう南稜の核心部に辿り着いた。 一息入れてから、まずは観察してみる。
直登ルートは「中級ザイル使用」と岩のプレートに書いてある。 なるほど、少し被った岩にい
きなり取り付かなければならない。 これでは無理と悟り岩溝のコースへと左に廻り込む。 し
っかりした道がついているので分かり易い。 
と、いきなり道が無くなり、ここを登れと言わんばかりに、さびしいワイヤーが取り付きの所にあ
る。 フィクスロープは見当たらない。 
正確に言うと、この南稜P3ガリー「広河原第三ルンゼ最上部のガリー」になるらしい。 
岩溝のコースと導かれた所は上も下もガリーが続いている所に横から合流する格好になる。
第三ルンゼを登ってきた人には大したことないだろうけど、山こじにとって、この取り付きだ
けは緊張が走った。 でも、これを越えれば後は三点確保さえ守っていれば登攀(?)に手こず
る事はなかった。 
もちろんフリー・ソロなので油断は禁物だが・・・。

 
フィクスロープは無かった

ガリーを登り詰め、草付きを這い上がるとP3直登ルートと合流する。12:18 
次のP4 は難なく通過し、開けた頂上へ躍り出る。12:40


P3ガリーを見下ろす
 



頂上では先行者の人が「お疲れさん!」と声をかけてくれた。 
先行者の御仁は浜松から来た延原さんで300名山を既に踏破された強者だ。 
頂上では、雲の動きが結構速かったので、展望は期待していなかったのだが、まずまずの景
色を堪能できた。 


中岳と後ろは赤岳


権現岳と後方は編笠山

やっと、落ち着いて昼食を摂っていると、中央稜から登ってきた地元の登山者延原さん
とで話がまとまり、中央稜を下山路に取ることになった。
その方は、どうせピストンで下りるのだからと御一緒してくれるらしい。 
御小屋尾根を下りに使おうと考えていたが、中央稜の方が冬に使えそうなのでラッキーだ。
彼は中央稜を2時間半で登ってきたらしい。 
いざ下りだすと、すごく速い足の人だった。13:13
 



再三、足の遅い我々二人を待っていてくれるのだが、あまりにも申し訳ないので、
「これから先は大丈夫ですから・・・」と御礼を言って先行してもらった。 
引き絞った矢が放たれた様な、足裁きとそのスピードに、我々は感心してしまった。
さすが、山岳部出身っ!
急勾配の中央稜も程なく終わり、林道に出て、鈍足の我々も無事に船山十字路に帰着。15:
50

 



今回は道を間違えたけれど、憧れの南稜を満喫できた満足の山行きだった。


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