2008. 7. 12〜14
山こじ通信vol.29
角兵衛沢から鋸岳(2685m)縦走


駒津峰からの鋸岳の稜線

山行き行程(2泊3日 2008,7,12〜14)
第一日目(予定歩行時間4時間40分) 撮影+小休止5時間10分

・・07:30・・・・・・・・・・・08:35・・・・・・・・・・・09:50〜10:40・・・・・・・・・・・・11:30〜12:00・・・・・・14:00
戸台P (1:10) 砂防ダム (1:20) 角兵衛沢ノ出会 (0:40) 一合目 (1:30) 大岩下ノ岩小屋
・・・・・・(1:05)・・・・・・・・・・(1:15)・・・・・・・・・・・・・・・(0:50)・・・・・・・・(2:00)・・・・・・・・・・・・・・
第二日目(予定歩行時間7時間20分) 撮影+小休止7時間10分

・・05:30・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・07:30・・・・・・・・・・・・・・・・・08:10〜08:40・・・・・・・・・・・・・・・・11:50
大岩下ノ岩小屋 (2:20) 角兵衛沢のコル (0:20) 鋸岳[第一高点] (2:30) 中ノ川乗越
・・・・・・・・・・・・・・・・(2:00)・・・・・・・・・・・・・・・・・(0:40)・・・・・・・・・・・・・・・・・(2:10)・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・14:00・・・・・・・・・・・・・・・・14:10
(2:00) 赤河原分岐 (0:10) 六合目石室
(2:10)・・・・・・・・・・・・・・(0:10)・・・・・・・・・
第三日目(予定歩行時間4時間20分) 撮影+小休止5時間30分

・・05:30・・・・・・・・・・・・・・・・・08:00・・・・・・・・・・・・・・09:10・・・・・・・・・・・・11:00・・・・・・・・・・・・・・・・・13:00
六合目石室 (1:30) 甲斐駒頂上 (1:00) 駒津峰 (1:50) 北沢峠…….(バス)……戸台P
・・・・・・・・・・・・(2:30)・・・・・・・・・・・・・・(1:10)・・・・・・・・・(1:50)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



目一杯でした!  
憧れの北鎌尾根に比して、ある人は「ミニ北鎌」とか・・・。
近年、鎖や赤ペンキのマーキングが施され「鋸岳も一般コースに成り下がった!」とか・・・。
山こじは、ハーネス・カラビナ・エイト環・ザイル8o×48m・ヘルメットetc・・・。
登攀の道具を揃え、自宅で車庫の張りにぶら下がったり、懸垂下降の途中停止etc・・・の独習
をして、今回の山行きに望んだ。

先に言って置きますが、「鋸岳は覚悟のいる山」です。
                                    (山こじのレベルでは・・・

第一日目
○戸台駐車場〜角兵衛沢ノ出会
 前夜発で自宅を車で出発し、深夜2時頃に「道の駅南アルプスむら長谷」に到着。
車中で仮眠を摂り、6時半頃起きて戸台に向かう。
帰りにバスで通るであろう鮮やかな赤い色の戸台大橋を過ぎ、河原の駐車場へと向かう。
 駐車場には、先客の車が2台停めてあった。 皆、長い河原歩きを頑張っているな〜。
しっかり準備をして、3日間の安全を期して出発!(07:30)
「一般車通行止」と標識があるが、工事車両のキャタピラの重機以外は絶対に走行できない。
 ダムの工事の時作った仮設の通路だから、水量が多い時に侵食されていて、至る所で寸断
されているのだ。 一般の四駆程度では問題外だ。

 

天気は快晴で最高だが、日陰がまったく無いので暑さも最高だ!
唯一、救われるのは河原なので何処ででも冷たい水で顔を洗える事だ。とっても気持ちが良
い!
行く手には、遥か高い所に、双子山六方石が見える。明後日にはそこを通過している筈
だ。

 

 角兵衛沢の出会の近くで、渓流釣りの若者2人と出会う。足回りが良いのか、河原の石伝い
にピョンピョン飛びながら移動している。
「 あぁ、あの身軽さがうらやましい・・・。
               テン泊の装備でザックが肩に食い込む。」

 

前方を見ると、それと分かる大きなケルンが右岸の河原に立っている。 角兵衛沢ノ出会と思
うのだが、左岸の奥にある筈の標識が見当たらない。 もう少しもう少しと歩き、熊ノ穴沢ノ出
会近くまで行きそうなってしまったので、靴を濡らさずに渡渉できそうな所で右岸側に渡りケル
ンに戻る。 はたしてその通りであった。
いよいよ、鋸岳に取り付くゾ!
 気合だ、気合だ、気合だぁ〜!!(10:40)

○角兵衛沢ノ出会い〜大岩下ノ岩小屋
急峻な上りが、いきなり始まる。 踏み後は、はっきりしているのだが、あちこち勝手に広がっ
ていて、「少し無茶な道じゃないですか」と、振り返ると2〜3m横に、もっと楽な踏み後を
発見したり、とにかく上に向かうしかない。

※情報 一合目の分岐の前後のガレ沢に水場があった

やがて、一合目に到着。(11:30)
ここで道は、左に横岳峠、右に岩小屋へと分かれるが、左の横岳峠への道は廃道になって
いる。
しだいに、道のマーキングが寂しくなってルートミスを繰り返しながらも上り詰めて行くと、前方
に樹林帯の切れ目が見え大岩が現れた。
大きな岩の転がっている草地を進むと、今日の宿泊地の岩小屋に到着。(14:00)

 
テントサイトには先客がいて、エスパースが1張りあった。 留守のようだ。
少し離れてテントを設営し、食事の準備をした。 水場は水道の蛇口が開きっ放しじゃないかと
思うほど豊富だった。 やがて先客が戻ってきた。4人の年配のパーティーだった。
鋸岳(第一高点)のピストンをして来たそうだ。
夕闇に暮れていく中央アルプスを見ながら冷たくて美味しい水割りを飲み、今日の行程が終
了。



※情報 大岩下の岩小屋の水場は水量が豊富なので涸れる心配はまず無い。

第二日目
○岩小屋〜角兵衛沢のコル
隣のパーティーと同時に岩小屋を後にした。(05:30)
今日の彼らはひたすら沢を下りて下山するのみ、こちらは今回の山行きのメインイベントだ。 
山こじの登山人生で目一杯背伸びした山域に突入する。
樹林帯を抜けると角兵衛沢の上部のガレ沢になる。 まるで蟻地獄のように足元が流され、3
歩進んで2歩下がる♪〜って感じだ。 ただひたすら根気を必要とするガレ沢も終わろうとする
頃、ビバーグできそうな場所がいくつかあった。 水場がないので雪のシーズン用だろう。
やっとの事で角兵衛沢のコルに到着(07:30)

 



左側は横岳峠・三角点ピークからの道、右は鋸岳(第一高点)への道だ。
第一高点への道は頂上が尖がっているだけに狭く、道の横はスッパリと切れ落ちている。
手掛かりとか何にも無いのでバランスを崩したら、即アウトだ!
何処にも触らずに200〜300mはダイビング出来そうだ。 ピストンで登られる人や、雪のシー
ズンに来る人は要注意だ!
特に下る時がヤバイと思う。
ここで、横岳峠にテン泊して第一高点をピストンで下りて来られた、御夫婦と出会う。
 sudoさんのホームページ「やっぱり山が好き」をよく見るそうだ。 
山こじ通信もたぶん見ている筈と言っていた。(知名度の差を感じる・・・)
ひと踏ん張りで鋸岳(第一高点)に到着。(08:00)


今までの頑張りのご褒美とばかりに絶景が迎えてくれる。 360度の大パノラマだ!
 
○第一高点〜第二高点



いよいよ今回の山行きの核心部に突入だ。(08:40)
ギザギザの稜線を縦走しなくて
    鋸岳に行って来たとは山ヤ仲間には通用しない!
ザイル以外の持ってきた登攀道具全てを身に付け、ヘルメットをしっかりと被り第一高点を後
にする。稜線伝いに下り気味の道を進む。
「ワクワク・・・、ドキドキ・・・、
          ギョエッ〜〜!!
初めのうちは踏み後もしっかりあり、普通の登山道だが・・・。
無い・・・のである。 踏み後が・・・。



当然である。 ここが小ギャップで皆が懸垂下降をして下りる所だ。(08:50)
7〜8mの下降の後、12〜13mの登り返しだ。 山こじの心に迷いが生じた。
だって、下りたらもう戻れないのだから・・・。 
泣いても喚いても助けは来ない領域に
             自分から入っていくのだ。 
       でもビビッて敗退したら、皆に顔向けできない!
鎖をしっかり掴んで下りる・・・着いた所は奈落の底? 狭くてすぐに脱出したくなる所だ。長居
は無用とばかりに、すぐに反対側の鎖に取り付く。(09:00)
鎖は、アンカーや支点の取りやすい場所から垂直に垂れているので、手掛かり・足掛かりのあ
る壁面まで煽って寄せてこなくてはならない。
鎖よりも2m位横の壁に取り付く。左手には鎖を、右手と両足とで、しっかりと岩に取り付く。
登りついた先は、ナイフエッジの岩だ。 一息入れ、登ってきた小ギャップを写真に収める。 

 

※情報 小ギャップはどちらから来ても、しっかりとした鎖が取り付けてあるので、自分の取り
      付く壁面まで、手繰り寄せてから壁に取り付くと良い。
       鎖は当然のごとく垂直に垂れているので、そのままだとハングした壁面などに取り
      付くようになってしまう。壁面をよく見て登り易い所を捜して取り付く事。

今度は甲州側に下りて鹿窓に向かう。 ここで皆が間違えたように紛らわしいガリーを通過す
るか悩んでしまった。 あまりにも狭いのでザックを降ろしてから、空身にならなければ下りられ
そうにも無いガリーなのだ。 でも下りるには懸垂しなければ先が見えないのでとてもヤバイ!
 支点を何処に取ろうかと捜していると、踏み後を発見!(09:10)
踏み後に従って行くと・・・鹿窓を発見! やれやれだぁ〜。
ここで写真を撮ったりしてひと休みだ。(09:30)
 
 

鹿窓からも丈夫な鎖が設置されていてガリーを下りるようになっている。
今まではここで懸垂下降をした筈だが、残されている懸垂の支点より鎖のアンカーの方が新し
くて信用できそうなので、ここでも鎖で下りる事にする。
30m位下りた所で鎖が終わり最後の一歩分長さが足りなかった。
逆コースなら鎖無しでも登れると思うが下りる時は足元が見えないだけに不安だ。
 
 



下りたガリーからは右側の草付き部分に道があり最下部まで下りる様に導かれる。
最下部からはガリーを横にトラバースして大ギャップのガレに向かい登るように矢印がある。
(09:40)

 



丁度、ルートを目で追っている時に逆コースから若いパーティーが下りてきた。
ガレ沢を崩すように、一歩が50p位流されている。 これを登れってか?
軽く言葉を交わし、お互いの健闘を誓う。(10:10) 
意を決してトラバース開始。 向こう側に渡ったすぐの場所でグズグズの水の染み出ている岩
から古いハーケンを回収した。 岩が脆いので簡単に取れた。こんなので役に立ったのだろう
か?
 ガレ沢を足元が崩れるより早く、歩を進め、やっとの事で藪道に入る事が出来た。
古い指導標を見つけ、ルートが正しいことを確認する。たぶんsudoさん達も見たであろう、看
板だけで足が無く、第二高点を下りて第一高点に向かう人の為の看板だ。



枝につかまりながらの急登を息を弾ませながら上りきると第二高点に到着。(10:30)
縦走を終えた満足感と安堵感が交錯して第一高点を見つめながら、しばらく茫然としていた。
ここも、第一高点と同じく絶景が広がり大満足だ。

同じ最高の景色でも、第一高点は縦走する前、第二高点の景色は縦走を成し遂げた後眺め
ているので、夏休みの宿題が残っているのに遊んでいるのと、宿題をやり終えて何の心配もな
く遊んでいるみたいな違いがある。(何のこっちゃ?)

今回の山行きのメインイベントを成し遂げ達成感一杯のアンパンを食べながら大休止だ。
(本当はビールで乾杯したいところだが・・・)
11時頃、大ギャップの最下部ですれ違った若いパーティー第一高点に到着したのが見え
た。 手を振ってお互いの縦走達成を喜びあった。

○第二高点〜六合石室
第二高点から中ノ川乗越へはガレ沢を下りる。かなりの角度でズンズン下りてゆく。
逆コースの場合は相当疲れると思う。 
下り着いたコルが中ノ川乗越で、雪のシーズンではビバーグ地らしい。
 



コルからは樹林帯を歩くようになる。 烏帽子岳がだんだんと間近に迫ってくる。 
今回余裕があったら烏帽子岳の山頂をピストンしようと目論んでいたが、樹林帯の藪こきに疲
れて今回はパスした。 迷い易い分岐を過ぎ三ツ頭へ到着。 
山頂を巻いているのでピークを踏むべく駆け上る。 ここは独標になっているので景色が良
い。 今夜の寝ぐらの六合の石室も見えた。 もう一息だ。(13:10〜13:20)

 

三ツ頭からも樹林帯を歩き赤河原分岐に到着。(14:00)
さらに進むと白い砂地で石碑のある所に出てくる。これを通過してすぐに石室に到着。(14:10)
六合目石室はとても綺麗に修復されて内部には床まで取り付けられていた。
今夜は日曜日の晩なので、山の中に一人ぼっちをいい事に床の上にテントを張り、小屋全部
を独り占めして過ごせた。

 





※情報 水場はさっきの砂地を信州側に10分ほど藪こきをしながら下りる。
      かなりの急登なのでサブザックを使用したほうが良い。
      水場になかなか着かなくて不安になった頃に、やっと水の流れる音がしてくる。
      涸れそうにない、しっかりした水場だった。

水場では4gと2gと750ccの水筒に水を詰め、汗だくになって戻ってきた。
小屋でサブザックを開けると中が水浸しだ。 変だな?と思い調べると、4gの今回新調したタ
ンクが漏れていた。 おかげで1g位の水がザックの中で無駄になってしまった。
おまけに、水浸しの三脚やザックを干すべく ウロチョロしている時に足元がビーチサンダルだ
ったために足の裏の皮を剥いてしまった。大事でなくて良かった。
ここで、山こじが持ち歩いている救急セットの中身を公開!


虫刺され薬(キンカン)、眠気防止薬、鎮痛剤、整腸剤(正露丸)、目薬、花粉の薬、絆創
膏、ガーゼ、包帯、裁縫道具、予備電池。 アッ消毒液を忘れている!

 
甲斐駒の天然水で傷口を洗い流して絆創膏を貼って治療終了。
幸いにも、土踏まずなので歩くには支障がないのでひと安心だ。
棒ラーメンとアルファ米の食事を済ませ、ウイスキーの天然水割りを飲みながら待ったりとした
時間をラジオと共に過ごす。 夜はやはり寒かった。
岩小屋の中でテントを張り、10℃対応の夏用のシュラフ+シュラフカバーにフリース着用でも少
し寒く感じた。 軽量化の為にマットは持参しなかった。

 



第三日目
○岩小屋〜駒頂上
明け方の3時から5時位までは小屋の外が横殴りの雨で出発できるのか不安だった。小屋の
中で準備完了で待つ。 5時半頃、雨が止み風だけになったので小屋を出る。(05:30)
視界は50mほどで遠望は利かないが道は間違わない程度だ。 
六合目の石室なのだから、七合目の看板は当然ごとくあった。(06:20)
 目の前に岩稜が近づき、鎖場があった。 空身なら大した事無いのだが、テン泊の装備で登
るのはちょっとキツイ! なんとか登りきる。(06:30)
つぎに出てきたのは番線の張られている足元のヤバイ所だ。 皆のレポを見ていると、さほど
危険ではないと書かれているが、ここに雪や氷が付いている時は、頼りになる番線だ。
これを過ぎると、北鎌に例えるなら「北鎌平」みたいな所に到着。(07:10)

 

最後の槍の穂先みたいな頂上直下で雷鳥の親子と遭遇!


厳しい自然の中で雛鶏を2羽連れていた。
最後の岩場を抜けると駒頂上に到着。(07:30)
展望はまったく無い! 黒戸尾根からきた2人の若者が寒さに震えながら食事を作っていた。
 初めての甲斐駒で展望がゼロとは残念だ。

 

○駒頂上〜北沢峠
景色も無く、寒いだけの頂上に長居は無用と出発。(08:00)
雪のない甲斐駒は初めてで、さらに黒戸尾根からのピストンだったので初めて見る景色を見
ながら整備された道を下りる。



駒津峰で天候も回復してきたみたいなので、このまま稜線伝いに歩く。(09:10)
双子山通過。(10:00) 北沢峠到着。(11:00)
帰りの戸台行きのバスは13時発なのでかなりの時間待つのかと思ったが、臨時バスがでたの
で12時にはバスの人となった。

 

おまけ
バスの中では、仙丈ヶ岳を登られたハイカー達と一緒になり、スーパー林道から
見上げる鋸岳の稜線を歩いてきたと言うとヒーローみたいに扱ってくれた。
                           (チョットえっへん!)



総括
・鋸岳〜甲斐駒のコースで行かれる方は2泊3日で余裕を持ったほうが良いでしょう。
・逆コースならば1泊2日でも大丈夫だと思います。
・稜線伝いに歩くコースなので捻挫や骨折などのアクシデントを起こさない慎重な歩行をしてく 
 ださい。
・すれ違う人の少ないバリエーションルートなので滑落しても発見が何日も遅れてしまいます。
 すべて自己責任で行動してください。
・鎖が取り付けられても簡単な山になったのではなく、それなりの腕力・体力が必要な領域で 
 す。 
・一般のハイカーの来ない静かな山旅が出来るコースです。
 ゴミを出さずに何時までも変らぬ自然を守りましょう。
 山旅の思い出に「ゴミ目撃」のページは要りません。



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