2008.9. 13〜14
山こじ通信vol.30
リベンジ北岳(池山吊尾根)



山行き行程(1泊2日 2008.9.13〜14)
第一日目(予定歩行時間6時間35分) 撮影+小休止4時間50分

06:40・・・・・・・・・・・・・・09:00〜09:25・・・・・・・・・・・・11:30〜12:00・・・・・・・・・・・12:25
広河原 (3:05) 白根御池小屋 (3:00) 小太郎尾根 (0:30) 肩の小屋        
1520m・・(2:20)・・・・2230m・・・・・・(2:05)・・・・・・・・・・・・・・(0:25)・・・3000m
第二日目(予定歩行時間6時間45分) 撮影+小休止6時間23分

06:30・・・・・・・・・・・・・・・・07:13・・・・・・・・・・・・・・08:08・・・・・・・・・・・・・・・・・・・09:05・・・・・・・・・・・・・・・
肩の小屋 (0:50)  北岳  (0:45) 八本歯ノコル (1:00) ボーコン沢ノ頭 (2:20)
3000m・・・・(0:43)・・・3193m・・(0:55)・・・・・・・・・・・・・・(0:57)・・・・2830m・・・・・・・(1:50)

・・・10:55・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12:53
池山御池小屋 (1:50) 歩き沢橋
・・・2200m・・・・・(1:58)・・・・・・・・


7月の末に痛めた腰の具合も良くなり、また山の空気を吸いたくなった。
約2ヶ月もの間、仕事や普段の生活にも難儀していたのに、
「チョット良くなるとすぐコレだ!(怒)」新妻ちゃんから言われそうだ。
9月の連休は期待していなかったので、具体的には何も計画していなかった。
近場の八ヶ岳南アで適当な所を捜すがコレと言った所が無い。
そこで2006年に天候の悪化で頂上を踏めなかった北岳にリベンジしようと決めた。
北岳は花の百名山でもあり高山植物の綺麗な山だが、バットレス(胸壁)と呼ばれる大迫力
の岩場を持つ、岩登りの聖地でもある。そして本邦の第二峰(3193m)である。
富士山も吉田口の1合目から頂上までを夜行登山する目論見もあったが、腰痛の病み上がり
状態での10時間を越す登山は無理だと思い諦めた。

9月12日の夜出発し芦安に向かう。 甲府昭和ICで高速を降り芦安方面へハンドルを向け
る。 夜叉神峠の駐車場まで行きたかったのだが、バス乗り場の所で警備員に止められ、
「ここから上は満杯で行けない」と言われ市営第3駐車場に停めた。
ここは、広河原行きのバス発着場のすぐ下で、トイレもあり結果的にはラッキーだった。
すでに車中で仮眠をしている先客がいるので、静かに車を停めこちらも仮眠を摂った。
3時頃から車内で仮眠をしていた登山者が起きだし、騒がしくなってきた。
バタンバタンと車のドアの開閉音で眠れない!
こっちはまだ2時間位しか寝ていないのに・・・。
意地になって目だけは閉じていたのだが、4時には眠る事を諦めて準備を始めた。 始発のバ
スは5時10分なのだが、すでに100人以上がバス乗り場に行列している。
30分以上待たされたあげく強引にバスの中に押し込まれ、広河原に向け発進。
バスの運転手から全員もれなく横Gを連続して体感できる無料サービス(?)を受け広河原
到着。06:10 
今回は北岳だけなので、のんびり秋山を満喫しようと思い、前回とは違う白根御池〜肩の小
を経由するコースにした。

 

久々にバットレス側からの北岳を仰ぎ見る。 
この山も、なかなかカッコイイ。「今度こそ頂上を踏むゾ!」と気合入れて出発。06:40
野呂川の吊り橋を渡り、いよいよ登山開始だ。 
寝不足の体に重荷を背負っての急登で早くも汗が噴出す。 体が慣れてくるまでの辛抱だ。
30分程で御池コース大樺沢コースとに分かれる。
ほとんどの人が大樺沢コースに向かう。 全登山者数の90%を越えていると思う。
タイム的には大樺沢コースの方が早いのだが、八本歯ノコルに着くまで景色の変化がないの
で、急ぎでなければ御池コースも捨てがたい。 初めのうちは風の吹き抜ける事の無い樹林
帯なので大汗を掻きながらの登りだ。
小休止を繰り返し、人に追い越されても気にしないでマイペースを心掛ける。 
また、腰でも痛めたらお笑い草だ。 
白根御池小屋の手前で水場があり、冷たい水を確保する。
それから間もなく白根御池小屋に到着。09:25
バットレスの登攀が目当てのパーティーが、早くもテントを設営し始めている。
白根御池小屋は1999年に雪崩で倒壊したが、2006年に再建された綺麗な小屋だ。
テントサイトの白根御池(2230m)の水は綺麗とは言い難い色をしていた。

 



ひと休みして、いよいよ草すべりの急登に取り付く。
結構な急登に他の登山者と同様に休憩を繰り返しながら上ると大樺沢右俣コースと合流し、
ひと上りで小太郎尾根の稜線(2890m)に到着。11:30
ここからは真正面に仙丈ケ岳が見え圧巻である。


仙丈ケ岳3033m

余力があったら小太郎山(2725m)も当初は考えていたが、行きは下りで楽なのだが、帰りの
上り返しを考えて取りやめにした。 


小太郎尾根(二重山稜) 奥が小太郎山2725m

ここで、汗を乾かすべく景色を見ながら休憩を摂る。 7月に歩いた鋸〜甲斐駒方面は雲で覆
われてよく見えない。 今日は雲の動きが速いのでなかなか良い写真が撮れない。 

重い腰を上げ、ひと上りで肩の小屋(3000m)に到着。12:25 



 

テン場も混雑が予想されるので、すぐに受付を済ませ設営場所を確保した。
最近のゲリラ豪雨のおかげか、水の備蓄は豊富で好きなだけどうぞと言って1g=100円だっ
た。
ラーメンの食事を済ませ、ウイスキーの水割りで寛いでいるうちに寝不足の為に、いつの間に
か眠ってしまった。 夕方にアルファ米の五目ごはんで夕食を済ませて再び寝た。
今回初めて使ったエアマットはとても寝心地が良かった。

翌朝5時頃テントをたたく音で外に顔をだす。雨が落ちて来たのだ。
今日の予定は池山吊尾根だが、雨の状態では大樺沢に変更も考えられる。頂上を越え八本
歯ノコルに下りるまでにコースを決定する事に決めテントをたたみ出発。06:30
ガスの流れが速く、なかなか展望が開けない中、大勢の人がごった返している頂上に到着。
07:13  良い写真を撮るべく、一瞬のチャンスも逃すまいとカメラを構えて待つのだが、今日
はガスで望めないと諦めて、頂上滞在時間2〜3分で八本歯に向かう。 下りる道も北岳山荘
から上ってきた人達が次々と列をなして来る。今日は生憎の天気だが、これも登山と諦めても
らうしかない。



ガレ場の続く道を慎重に下りて、2006年に雷雨で頂上を諦めた北岳山荘へのトラバース道ま
で下りてきた。 あの時、今歩いて来た所は全て落雷の嵐の真っ只中だった。 トラバースして
正解だったと改めて思った。 やがて八本歯ノコルに到着。08:08


八本歯ノ頭2920m

ここで雨具を脱ぎ、やっと足の動きが開放された。 皆がコルから大樺沢を下りてゆく所を長
い梯子と岩場を登り、八本歯の頭(2920m)に向かう。 
後方で「あの人は何処に向かっているのだろう?」等の声が聞こえてくるが、お構いなし
に登る。誰一人後続してくる人はいなかった。 


岩登りの聖地 北岳バットレス

昭文社の山と高原地図によると、コルから2時間30分で広河原だが、池山吊尾根だと5時間
10分もかかって歩き沢橋にたどり着く。 2倍も時間が掛かり、しかも不便な所に下り着くので
は一般登山者が歩く訳が無い。 いわゆるスキモノだけの天国だ。

昔、南アの懐奥深い北岳を目指すにはこの道しか無かったのに、スーパー林道
が出来てからというもの、冬季のルートとして以外は歩く人がほとんどいない。
 
自分としては、昔の多くの人々が歩いた歴史のある道で頂上を極めたい。 
甲斐駒の黒戸尾根、北岳の池山吊尾根、まだ歩いていないが富士山は吉田口
の1合目から頂上まで・・・etc。
楽に百名山の数を消化する為の歩き方は好きではない。 
他人の選んだ百の数字にこだわりたくないし意味が無いと思う。 
自分自身が選び、好きで登った山が百個あれば良いのではないか!

八本歯の頭からボーコン沢ノ頭(亡魂沢)までは比較的緩やかな稜線歩きだ。
何度も北岳を振り返ってはシャッターチャンスを狙うがなかなかガスが晴れて来ない。 
やがてボーコン沢ノ頭に到着。09:05

 

周囲は広い礫原だ。風除けが一切出来ないので冬季に吹雪かれたら厳しそうだ。
鳳凰三山の方向もガスで展望が開けない。 時間も無いしガスが晴れる気配も無く、どちらか
というと雨が落ちてくる気配の方が濃厚なので先を急ぐ事にする。
ここでは広河原の方向の2802mピークに迷いやすいらしいので磁石で確認して池山吊尾根
に向かう。
すぐに藪こきを強いられる下りとなるが高度はグングンと下がって行く。樹林帯に入り勾配が
緩やかになって再び急勾配の下りが始まる。 この下りの前の平場が城峰(2372m)だと思
う。 標識も何も無いピークだ。 
背の低い草薮が続き、樹林の陰からようやく池山御池小屋(2200m)が見えた。10:55

 

元気だったら往復1時間かかるらしい水場を確認したかったのだが、とてもそんな体力は残っ
ていなかったので取りやめにした。 小休止でアンパンをかじって、すぐに出発。
しばらくは倒木の多い樹林の間を縫うように歩けるが、やがて急勾配の下りが始まる。
途中でこの尾根で初めての茸目当ての人と出会う。 
スキモノか物好きしか歩く事のない尾根で人と出会うとは期待していなかったので、お互い
にビックリして、暫らく話し込んでしまった。
彼と別れてからも倒木の多い急坂ズンズンと下る。
今日は大休止を取らずに時間に追われっ放しで、ずっと歩き詰めだった事もあり、両膝が痛み
出して来た。 のんびりと秋山を楽しむ予定が根性の要る尾根歩きになってしまった。 歯を喰
いしばって痛みに耐え、ようやく舗装路が見えた時にはホッとした。
下りついた所が歩き沢橋のバス停だった。12:53



ここから更に40分の車道歩きと1時間30分の鷲の住山の上りは、疲れきった体には無理だっ
た。 バスの時刻表を見ると14時に便があり15時の広河原のバスに間に合うのが分かると気
持ちが萎えてしまって、歩く気力は何処かへ吹き飛んでしまった。
野呂川の渓谷に見入り鳥のさえずり以外聞こえない林道に足を放り出して待ち時間を過ごし
た。
どんなに田舎でも定刻どおりに運行している日本の交通機関は素晴らしい!
バスに揺られ、さっきまでの苦闘が走馬灯のように駆け巡る、
                        今年の南アの秋が終わった。


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