2013.9.20~24
山こじ通信vol.42
笠~槍~穂高周遊
飛騨の名峰 笠ヶ岳(2897m) その名の通り市女笠に山容が似ている
山行き行程 (4泊5日) 2013.9.20~24 |
第1日目 予定歩行時間 8時間25分 (撮影+小休止 8時間06分 ) |
・ ・・・・05:25・・・・・・・・・・・・・・09:49・・・・・・・11:09~11:39・・・14:49~15:24・・・・・・・・・・15:36・・・・・・・・・・・ ・中尾高原口 (4:20) 最終水場 (1:20) 雷鳥岩 (2:30) 笠ヶ岳 (15) 笠ヶ岳山荘(テン泊) ・・・・980m・・・・・(4:24)・・・・・・・・・・・(1:20)・・・・・・・・・(2:10)・・・2897m・・(12)・・・・・2820m・・・・・・・・・・・・ |
第2日目 予定歩行時間 6時間40分 (撮影+小休止 6時間54分) |
・ ・・・06:00・・・・・・・・・・・・06:57・・・・・・・・・07:53・・・・・・・・・・・・09:42・・・・・・・・・・・10:18・・・・・・・・・・・11:16 ・笠ヶ岳山荘 (1:00) 分岐 (1:00) 秩父平 (1:20) 大ノマ乗越 (40) 弓折乗越 (1:00) 双六 ・・・・2820m・・・・(57)・・・・・・・・・(56)・・・・・・・・・・・(1:49)・・・・・・・・・・・・・(36)・・・・・・・・・・・・(58)・・・・・・・ ・ ・・12:16・・・・・・・・・・・・13:14・・・・・・・・・13:54・・・・・・・・・・・ ・双六小屋 (1:00) 双六岳 (40) 双六小屋 (テン泊) ・・2550m・・・・(58)・・・2860m・・・(40)・・2550m・・・・・・・・・・ ・ |
第3日目 予定歩行時間 8時間35分 (撮影+小休止 7時間31分) |
・ ・・・04:37・・・・・・・・・・・・05:36・・・・・・・・・・・・・・07:27・・・・・・・・・・・・・・08:30・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・双六小屋 (1:10) 硫黄乗越 (2:30) 千丈沢乗越 (1:30) 槍ヶ岳山荘 (山頂往復1:00) ・・2550m・・・・(59)・・・・・・・・・・・・・(1:51)・・・・・・・・・・・・・(1:03)・・・3060m・・・・・(山頂往復1:30)・・・・・・・ ・ ・・・11:11・・・・・・・・・・・・12:07・・・・・・・・・12:53・・・・・・・・・・・・・・13:19・・・・・・・・ ・槍ヶ岳山荘 (1:15) 中岳 (50) 天狗原分岐 (20) 南岳小屋(テン泊) ・・・3060m・・・・・(56)・・3084m・・(46)・・・・・・・・・・・・・(26)・・・・・3000m・・・・・・・ ・ |
第4日目 予定歩行時間 5時間40分 (撮影+小休止 5時間17分) |
・ ・・・05:23・・・・・・・・・・・07:00・・・・・・・・・・08:16~09:16・・・・・・・・・・・・・・11:30・・・・・・・・・・ ・南岳小屋 (2:00) A沢のコル (1:30) 北穂高小屋 (2:10) 穂高岳山荘(テン泊) ・・3000m・・・・(1:37)・・・・・・・・・・・・(1:16)・・・・3100m・・・・(2:24)・・・2996m・・・・・・・・・・・ ・ |
第5日目 予定歩行時間 6時間05分 (撮影+小休止 4時間50分) |
・ ・・・05:47・・・・・・・・・・・・・・・07:18・・・・・・・・・・・・08:00・・・・・・・・・・・・・08:45・・・・・・・・・・・・・・09:17・・・・・・・ ・穂高岳山荘 (2:00) 荷継小屋跡 (50) 重太郎橋 (1:10) 奥穂登山口 (50) 穂高平小屋 ・・2996m・・・・・・(1:31)・・・・・・・・・・・・・・(42)・・・・・・・・・・・・(45)・・・・1540m・・・・・(32)・・・1320m・・・・・・・ ・ ・・09:23・・・・・・・・・・・・・・10:08・・・・・・・・・・・・10:43・・・・ ・穂高平小屋 (40) 新穂高温泉 (35) 中尾高原口 ・・1320m・・・・・・(45)・・・1090m・・・・・(35)・・・・980m・・・ ・ |
「憧れの槍・穂縦走
「北ア最難関ルート!」
「国内でも第一級の岩稜縦走路」
登山を始めた時から、登山雑誌やガイド本のメイン記事・・・どころか表紙の写真や北アの代名詞にまでなっている超メジャーなルートだ。
山こじは今までそのルートを避けてきた。 「何故か?」
それは、超メジャーなルート
=誰もが憧れる、もしくは目標にしているルート
=超ウルトラ級の渋滞が予想されるルートだからだ。
今回はその憧れのメジャールートと最近のガイド本ではマイナーなルートに成り下がってしまっている笠ヶ岳のクリヤ谷を合わせて周回ルートにしてみた。
先ず初日にクリヤ谷を上り、一気に高度を上げ飛騨の名峰笠ヶ岳を登頂、翌日から稜線を縦走し、4泊5日の最終日まで2500m~3000mの高度に留まり、毎日が稜線漫歩の絶景を約束するルートである。 しかもルート取りが多彩なだけにエスケープルートが多く安心感もある。
第1日目( 9月20日 金 )
一日目は中尾高原口からクリヤ谷経由で笠ヶ岳(標高差1917m)迄ひたすら登りのみ
前々日の朝までは仕事との兼ね合いで今回の山行を諦めていたのだが、「休んでもいいよ」のひと言で一気に気分は頂点に達した。
しかし今回の登山口の新穂高温泉に未だ行ったことが無いので、駐車場の確保が心配の種だ。
急いで帰宅し夕食後に装備の再点検などでドタバタして、結局仮眠無しの出発になった。(22:30)
さすがに3連休の前日出発なので、高速道路も渋滞無しでスイスイ、狙い通りだ。
一本道は渋滞のネックに成りうる所だが、そこは真夜中、誰ひとりいない田舎道だ。(失礼)
上高地の入口釜トンネルの交差点を左折、いよいよ岐阜県へ、ここまでストレスフリー。
静かな峠道だ、星もきれいに輝いている。山の懐にだんだん入っていく感じだ。
山深い奥飛騨郷の雰囲気を楽しんでドライブする。(街灯が無くて真っ暗なだけだが・・・)
信号も無く、人も対向車も無い夜道を順調に走る。あまりにも快適なので、トンネルを抜けた所が目的の中尾高原口だったのに、次のスノーシェルターをも潜り西穂高ロープウェイまで来てしまった。
これでは行き過ぎ、Uターン。 再びスノーシェルターを潜り、ネットで調べていた中尾高原口の駐車場に到着。
まだ車が少なく一番奥のスペースに楽々で駐車できた、ラッキー♡(02:30)
もう無理だ。 仕方がない、仮眠無しの強行出発だ。(05:25)
今回は厳しいルートとしてガイド本などで有名なクリヤ谷から登ると決めている。
笠新道の方が楽に早く頂上に立てるらしいが、登山は頂上に立てば良いというものではない筈だ。
皆がキツイというのなら、
どれほどキツイのか登ってみなければ何も語れない!
(自虐的だけどワイルドだろぉ?)
笠新道コース=新穂高温泉から蒲田川左俣林道を3.5㌔、1:00の林道歩き。
笠新道登山口(1360m)から5:50の急登で稜線の分岐、1:30で山頂。
林道1:00+登山道7:20 標高差=1537m
水場無し
登山道8:25 標高差=1917m
渡渉複数個所有り、水場有り
笠ヶ岳の登山道は、どちらを選んでも厳しい事に変わりは無いみたいだが、迂回コースとしてワサビ平から小池新道を経て、鏡平・弓折岳・抜戸岳と縦走し笠ヶ岳に至る、逆側からのコースを紹介している。 これでは笠ヶ岳の頂上に立ったとしても登ったのでは無く、縦走で通過したコースだ。
目標とする山に直接の登路があるのならば、
そちらを選択するべきである!
それを逃げた安易なルートでは登った事にならない!
自分自身としては飛騨の名峰笠ヶ岳を登って縦走に入りたいし、笠新道を使うと2日目に同じ道を戻らなければならなくなる。
これでは縦走計画としては・・・間抜けである。 南から取りついたら北上するだけの方がスッキリしている。
2か月ぶりのテン泊装備のザックは重いのだが、そんな事よりもまた山に来られた喜びで嬉しい♪
足取りも軽く(最初だけだが・・・)中尾高原口駐車場(980m)を出発。(05:23)
中尾高原口駐車場(無料) クリヤ谷登山道入り口・登山ポスト
前回よりは山の足が出来ている(はず?)ので不安は無い!(ほんと?)
駐車場から5分程で槍見館の横の登山口に着く。 綺麗なポストが設置してある。登山届を入れて縦走のスタートだ。
4泊5日の山旅スタートに心が躍る♪
最近は最少限の装備(水と補給食くらいか?)で山道を駆け抜けるトレラン(トレイルランニング)とやらが流行っていて、笠ヶ岳も笠新道とクリヤ谷を結ぶルートを日帰りで駆け抜けるのが人気だ。登山道に整備の手が入っているのは、そのせいもあるのだろう。 他には剱岳の早月尾根の往復や甲斐駒の黒戸尾根の往復などがあるらしい。
富士山登山マラソンから始まったと思うが、トレランは市民権を得たみたいだ。
しかし、歩きでも、走りでも怪我やトラブルは誰にでも起こりうる事なので、
片足の捻挫や骨折位で遭難騒ぎを起こすのは止めてもらいたい。
山に入るという事は、それらのアクシデントを承知で、自分一人で対処する覚悟がなくては山で遊ぶ資格は無い!
ただの軽率で人騒がせの我儘なハイカーに成り下がってしまう。
山こじは登山を愛する、山ヤでありたい!
登山道からは見えていない。(それとも見落としたか?)
少し歩くとピンクのテープがやたらと木の枝にぶら下がっていて賑やかだ。 ここが最初の渡渉箇所だと教えてくれている。
クリヤ谷は大雨の後など増水している時は歩けない、と書かれているが今日は大した水量ではない。
この先何回か渡渉することになるが、結果的に最初の渡渉点が一番大きかったので、ここを渡る事が出来れば、この先の渡渉箇所は大したことは無いと思ってよい。
最初の渡渉地点 錫杖岳(2168m)
誰もいない・・・、物音一つしない・・・静かな山道だ。
しかし樹林帯の暑さは半端じゃない。 風は抜けないし、日差しも真夏の暑さと変わらない、滴り落ちる汗で全身びっしょりだ。
やがて左手に錫杖岳の岩壁が見えてくる。 錫杖岳は2168mなので、クリヤの頭の2440mまでは、まだまだ遠く及ばない。
クライマーが胸躍らす錫杖の岩壁を見上げているうちは、まだまだ足元の標高は低く先は長いのだ。
槍~穂高の稜線(旅の後半のルート)をバックに登る
後ろを振り返ると今回の山旅の後半で縦走する予定の槍から穂高の稜線が遮るものも無く、目に飛び込んでくる。 長野側からの見慣れた右手に槍~左手に穂高と連なる稜線のシルエットと飛騨側から見る稜線は正反対だが、正しく槍~穂高の稜線だ。 特徴的な大キレットを含めたシルエット素晴らしい。
逆方向から見る槍~穂高の稜線は生では見たことが無かったので急ぐ旅でもなし、小休止がてらコンビニで購入したお握りを頬張り、しばし景色に見とれる。(う~~ん素晴らしい)
最終水場(オアシス) 最終日の白出のコル
錫杖岳を左に見越し、蜂の巣岩に向かう。まだまだ残暑がキツイ、大汗を掻き々々、最終水場に到着!(09:49)
冷たい沢水が美味しい!
頭からも水を浴びる、ふぅ~~生き返るぅ~~♪
今回の旅では初日に笠ヶ岳の頂上に登ってしまったら毎日が稜線通しの道なので、最終日まで稜線から外れることが無い=水場は無い!
ここが今回の旅で唯一の、最初で最後の楽園、オアシスなのだ。 充分に休んで満足してから出発。
歩きだしてすぐに、入れ替わるように人の歩く気配がした。 誰かが水場に到着したらしい。 後続がいるというのは心強い。
同じような苦しさを共有して頑張っているのだ。 きっと同じ様に冷たい水場で元気を回復するだろう。
しかし先行している以上、後続から追い付かれるのは嫌っ!(いい歳して無理をしている)なので頑張って前進だ。
雷鳥岩 稜線に出て笠の頂上が見えた
ふぅ~ふぅ~・・・、2時間近くも休み無しで頑張り、クリヤの頭を巻き雷鳥岩に到着。(11:39)
遂に頂上が見えるポイントまで登り着いたぁ~~・・・が、ここで大休止!
もうダメぇフラフラだぁ~!!
寝不足でまったく足に力が入らないのだ。(オッサンだからねぇ)
稜線に出た事で先が見え、残りの行程の目途もついた。 少しは余裕が出来たので、ザックを下ろして大休憩を摂る。 水を飲み・・・美味い! お握りを食べ・・・旨い!
パクパクもぐもぐ・・・、パク・・・もぐ・・・、パク・・・、・・・zzz
はっ!! いかんいかんっ!!
お握りを持ったまま景色を見ているうちに、いつの間にか眠ってしまったいたらしい。 ちょっと間だけと思って時計を見ると、何と30分も時間が過ぎていた!
今回は相当体力的にキツイ!(いよいよオッサンだってば)まだまだ先は長いのに・・・。(オッサンに残された時間は短いゾ)
休んでいた岩陰から先ほどの水場でニアミスしたらしい登山者が現れた。
パワー全開のYoshikawaさん (背中のザックを見よ!なんと80ℓ・25㌔だ)
聞くと彼は山こじの近所、東京の東村山市から来たYoshikawaさんという。 彼の登場と共に驚いたのは、彼の背負っているザックだ。
それはお店でしか見たことがない巨大な80ℓザックだ。
お店で見るたび、こんな大きなザックを何処の誰が(どんな物好きが)背負うのだろうと思っていたが・・・、何と眼の前にいたっ!(信じられない)
彼のモットーは「食事は美味くなければならない!」・・・なので、重いのを承知でレトルトのカレーやゼリーなどを詰めているらしい。
同じ4泊5日のテン泊装備で、山こじは17㌔位で済んでいるが、・・・
Yoshikawaさんのザックは25㌔位はあるとか・・・。(ひょぇ~~)
しかし、若くもあり体格も良いのだから、担げるのだろう。(さすが若さだねぇ~)
すでにオッサン円熟期の山こじには、その体力は無い!(トホホ・・・)
今回も毎日が不味い食事で我慢するしかない。(毎日が罰ゲームみたいだ!)
Yoshikawa さんと意見が一致したのでここで一言、尾西食品さん(固有名詞はまずい? 味も不味い!)
アルファ米の開発努力には感謝していますが、もう少しあの味(とくに五目御飯)は何とかならないものでしょうか。
もう嫌だぁ~嫌だぁ~嫌だぁ~~~。
睡眠不足で力の入らない山こじと、あまりにも重いザックで古傷の膝を痛めているYoshikawaさんとが、お互いに引っ張り合って先を進む。
やがて、一段上がった様な稜線(笠ヶ岳は市女笠のような山体だから、肩の部分に到達したらしい)から頂上が近くに感じるで様になった。
近づけば近づくほど、頂上付近は瓦礫の山のような石の集まりで形成されている。
頂上に近づく・・・ 頂上は瓦礫の山!
もう少し・・・、あと少し・・・、最後の試練!とばかりに気合を入れ、遂に登頂!(14:49)
Yoshikawaさんもすぐ後から到着。お互いの頑張りに万歳だ!!永かったぁ~
笠ヶ岳頂上(2820m) 頂上で憩う登山者
頂上からは遮るものなく槍~穂高のパノラマが見渡せる
頂上では笠新道から登って来たご婦人が我々に話しかけてきて、
「クリヤ谷からですか?大変でしたねぇ、私達は楽々コース(笠新道)ですから(笑)」
と謙遜していたが、そんな事はない!どちらから登っても笠ヶ岳はしんどいです。
大絶景を満喫し、山頂の祠を覗き笠ヶ岳山荘へ。
頂上直下の小屋 石畳みのテラスの笠ヶ岳山荘
十六夜(いざよい)の月が明るい
テン場(25張)は小屋の下を5分程下った所だ。水とトイレは小屋なので、ちょっと不便だが我慢々々。
標高2820mのテン場では十六夜の月が明るく、西の空に明け方まで残っていた。(
二日目は笠ヶ岳から双六小屋まで稜線漫歩、絶景も一日中見られるとなると有難味が薄くなる
夕食の後は、まるで死んだ様に寝入ってしまったみたいだ。 普段と違って、大自然の中では、電気が無いのでテレビも灯りも無いし、初日の疲れもあって、寝るしかする事がない。
だから3時頃に目が覚めてしまっても睡眠時間は充分足りているのだ。ラジオを忘れたので夜明けまでの長い時間をつぶすのに苦労する。 再び眠ろうと試みるが、一度目が覚めると、もう眠れない。
9月の下旬とは言え、ここは北アの稜線3000m級なのだ!
夜明けの気温は零度に近い、寒いっ!!
こんな時は温かい飲み物が一番の御馳走だ。お湯を沸かし、ホットコーヒーと洒落こむ。
下界ではまだまだ冷たい飲み物が欲しい時期なのに、ここでは季節が先行している。
そろそろ、外では早立ちの人のテントをたたむ音がし始め、やっと遠慮なく物音を立てられる雰囲気だ。
テン場ではテントのファスナーの開け閉めの音や、コッヘルを重ねる時の音などが結構雑音として響くのだ。
テントを撤収するべく外に出てみると朝日が槍~穂のシルエットを映している。 御来光に見入っている人、テントをたたんでいる人、皆が朝の新鮮な空気の中に包まれている。
Yoshikawaさんはアルファ米の蒸らし時間を利用してテントをたたんでいる最中だ。 まだ時間がかかりそうなので、ちょっと先に出発した。
今日からは稜線漫歩の連続、大絶景を見ながらの縦走だ。(06:00)
笠が離れていく・・・だいぶ歩いて来た
朝日の中、よく整備され足に応える起伏が少ない登山道を快適に進む。
ガイド本でお馴染みの抜戸岩を抜け、更に進むと標識だ。登山道は稜線を巻いているので、外れている抜戸岳の山頂に寄る。(07:09)
縦走路とは離れている抜戸岳(2812m)
睡眠充分なので、昨日とは違い今日は絶好調だ。このまま快適な道を歩き秩父平に到着。(07:53)
秩父平 左の岩峰が秩父岩?
ここで、Yoshikawaさんが、先行。 彼の歩の進め方をちょっと観察する。 さすがに山慣れしていて、背負った重荷に合わせた荷重移動だ。
ドスンという着地をしない様に小刻みストックを使い、小さい歩幅で足を進めている。 膝に故障がある人は、歩き方にも細やかな配慮と工夫が必要なのだ。
左の稜線が大ノマ岳(2662m)、右に下る鞍部が大ノマ乗越、すこし登って弓折岳(2588m)
中央奥の鞍部が双六小屋、左上のなだらかな稜線が双六岳(2860m)
大ノマ岳の手前で小休止、逆方向からの登山者も休憩していて皆で談笑し、現在地確認や山座同定の話になり、それでは・・・と、各自のGPSの見せっこになったりした。
最近の装備の充実ぶりは素晴らしい! 体力はお金では買えないのだから、せめてお金で買える安全装備は持つべきだと思う。
中でもソーラー充電器をザックにセットしているYoshikawaさんのスタイルに皆が興味を持った。 1回のフル充電でスマホ2回分の電力を確保できるらしい。 検討の価値有りだ。
弓折岳(2588m) 弓折乗越(小池新道が合流)
小池新道、中央奥に鏡平山荘(2300m)
弓折岳の標識の一寸先が弓折乗越で鏡平からの小池新道が合流する。(10:18)
ここでは楽々登山(失礼)の人達が沢山休憩していてカラフルな出で立ち(古っ!ファッションと言えっ!)の山ガール♪も多数寛いでいた。(大体は彼氏と一緒だが・・・)
しかし、登山業界にとっても女性が登山に興味を持ってくれるのは、大歓迎だ。
ブームが続く事で登山業界全体が活気づくし、オッサン登山者も目の保養にもなりファイトが涌くってもんだ?
危険!キツイ!汚い!の3Kがお決まりの登山だったが、
感動!健康!カッコいい!の新しい3Kをアピールしなければ
登山の未来は無い!
花見平 シーズンには見事なお花畑が広がる
高低の少ない登山道をずんずんとハイペースで進む。 やがて花見平だ。(10:38)
花の季節は終わってしまっているが、ガイド本では素晴らしい花畑が広がる所と紹介されている。
さらに進むと、今日の泊地の双六岳(2860m)と双六小屋(2550m)が遠望できた。
昨日のクリヤ谷とは違い、ここまでほとんど苦労せずに歩いて来られた。双六池の横のテン場(60張)を見ながら到着。(11:16)
双六岳(2860m) 双六池
さっそくお昼ごはんを山荘の外のテーブルでいただく。
生ビールとカレーライスが美味しい! これでエネルギーは完全回復だ。 Yoshikawaさんは,持参のカップ麺で昼食だ。
山こじは,お昼の食糧は持って来ていないので、山小屋で調達するスタイルにして荷物を減らしている。
今日は、ここでテン泊だ。
テント設営後に、空身で三俣蓮華(2841m)まで行こうかと考えていたが、結構遠く感じたので、双六岳(2860m)の山頂往復だけにした。
空身になると、羽が生えたように・・・とまでは言わないが、足裏の蹴りが使えるくらいに身軽だ。
30ℓ位の小屋泊装備の人でさえも、重そうなザックを背負っているように見えてしまう。
双六岳はジグザグの急登の後、偽頂上みたいな丘を越えてから、ガイド本などで紹介されている広くてなだらかな広場が展開する。 その先のちょっとした高みが頂上だ。
この付近を歩いている時にYoshikawaさんが望遠で山こじを激写してくれた。
Yoshikawaさんは黒部五郎小舎まで行くので双六岳の山頂からでも2時間半くらいは行程が残っている。
先を急ぐ必要があるので、再開はならなかった。 アディオス♪
なだらかな稜線の奥に双六岳頂上がある 双六岳頂上(2860m)展望は最高
槍ヶ岳がドカ~ン、その名の通り槍が天を突き刺す! 北鎌尾根が凄い迫力で迫る
双六岳(2860m)の山頂からは北に眼をやると黒部五郎岳(2840m)・三俣蓮華岳(2841m)・鷲羽岳(2924m)・水晶岳(2986m)、ちょっと遠くに2ヶ月前に登った薬師岳(2926m)が見える。
反対の南側を振り返ると槍ヶ岳(3180m)がドカーンと迫まる大絶景が広がる。
今回の縦走の北限はこの双六岳まで、明日からはUターンして、いよいよ槍~穂高の大キレットを縦走する予定だ。
名残惜しいが、山頂を後にしてテントに戻った。(13:54)
明日登る樅沢岳(2755m)、双六小屋(2550m)から約200mの登りだ
まだまだ時間が早いので、テントで寛いでいる登山者を訪問してテントの長所短所の話題で会話を楽しんだ。 それぞれテントは各社の工夫やこだわりの賜物だ。
使い勝手などで個性を感じるが、一度購入すると買いなおす事は、先ずありえないので選ぶときは熟慮が必要だ。
ツェルトの人がコレは軽くて良いのだが、結露が凄いと教えてくれた。 雨の時は小屋泊にして、雨以外はツェルトにするという作戦も有りだと思うがどうだろう?
前回の縦走では、寒さに震えながら一日中強風と土砂振りの中を行動し、やっと辿り着いた奥黒部ヒュッテに、たまらず逃げ込んでしまった。
全身ずぶ濡れで、暖も摂れなきゃ服を乾かすことも出来ないので、雨中テン泊は相当辛いし、風邪をひいてしまう。
いずれにしろテントは使い方、その人の山行スタイルで選ぶべきだろう。
広いテントは快適だが重いし、ポールはスリーブ式がテント本体には優しいし簡単だが、風が強い稜線では吊り下げ式(と言うよりフック式)の方がペグダウンを先にでき強風下での設営も撤収もやりやすい。
出入口を短辺側に設けると狭い場所でも設営ができ、強風の時は(出入口は風下に向けるので)面積が小さい方で受けるので強いだろう。
逆に長辺側の入口は二人以上だと入口側の人を奥の人が跨がなければならないが、出入りしやすいし、何よりも前室が広くとれるので便利だ。
しかし風を広い面積側で受けるので短辺側のテントより風には弱い。
長所と短所を天秤にかけ、弱点を承知でカバーしながら使いこなす必要がある。
双六池のテン場は大賑わい 双六小屋も大賑わい
夕暮れが迫り、ようやくテントの中も過ごしやすくなってきたので、今日も罰ゲームの夕食を済ませ、ウィスキーの天然水割を飲み、星を見ながらゆったりとした時間を過ごして就寝。
第3日目( 9月22日 日 )
三日目は双六小屋から西鎌尾根を縦走して槍ヶ岳へ、泊地は南岳小屋の長丁場だ
3時には起床。 罰ゲームの朝食(毎回本当につらい)を済まし、物音を建てない様、なるべく静かにテントを撤収する。
まだ寝ている人が多いが、本日の行程は西鎌尾根を縦走し槍ヶ岳の先の南岳小屋まで、歩行時間7時間半くらいだ。
2500m以上の標高での夜明け前の外気は、さすがに寒い!吐く息も白く、関東の真冬と同じくらいだろう。
上着(マムートの防風はっ水フリース)を着ての出発だ。(04:37)
先ずは小屋からいきなりの急登を登り樅沢岳(2755m)にアタック。 標高差200mほどを30分かけて頂上に到着。(05:07)
夜明け前にスタート、寒いっ! 樅沢岳(2754m)で夜が明けてきた
夜明けの槍ヶ岳 かっくいいっ!!
頂上に到着してから、ようやく空が白み始めヘッデンを消す。 夜明けの槍ヶ岳がカッコいい!!
休まずに下りると、ちょっとした二重稜線のなだらかな場所に出る。 ここでテン泊装備のカップルに追い付く。(05:36)
ここでカップルと遭遇、槍は遥か先だ 硫黄尾根、水場が無く手ごわい岩峰冬のクライマーの領域
水を飲むふりをして休憩を摂り、わざと2~3分の距離を開ける。
しかしこのカップルは足が強く、そんな気遣いなどする必要が無かった。(オッサンの足が弱い?…う~ん否定できない)
追い付く(付いていく?)のがやっとで追い越すまでには至らない。 結局、槍の肩まで3分の時間差を縮める事が出来ずに終始した。
山こじの登山スタイルと同じで、彼らも休まないのだ。 唯一、カップルが休んだのは千丈乗越だけ。(07:27)
西鎌尾根は一般縦走路だが、結構手ごわい。 上部をカップルが登っている
自分の衰えと若者のパワーとの差に驚きを隠せない、歳の差を思い知らされた感がある。
もちろん狭い場所でのすれ違いや、落石などは持ってのほかだ。 お互いの安全を双方ともが注意し安全確保する必要がある。
千丈沢
飛騨沢と中崎尾根
稜線を登ったり、下ったり、岩場を攀じ登ったり、鎖場を越えたり・・・コースは目まぐるしく変化する。
先行のカップルも後ろを気にしているのか、山こじとの距離をキープしながら休み無しで進んで行く。
先ほども言ったが千丈乗越で唯一休んでいてくれたのだが、山こじが到着するのを待っていたかの様にして出発してしまった。
いよいよ槍の肩が間近に迫ったジグザグの道で2段位の差(30秒くらいか?)だったのだが、上からの3人で飛騨沢を下るオッサンパーティーに捕まり、会話しているうちに先行されてしまった。
結局、健脚のカップルとは会話出来ず終いで槍の肩(3060m)に到着。(08:30)
槍の穂先(3180m)は朝の大渋滞だ。
穂先の登攀の渋滞は泊り客が登る朝一番と、前日に槍沢ロッヂや大天井岳付近の小屋泊の人達が到着する10時~14時頃、頑張って初日に一気に登頂を目論んだ人の15時~17時というのが大体の傾向だ。
いつ来ても大人気で渋滞している槍の穂先
槍との再会を祝して乾杯! 槍沢、奥は常念岳~蝶ヶ岳
大渋滞の穂先を眺めつつ、今回の山行の全日程の半分を無事消化(何やねん?)を祝してビールで乾杯!!
(うまいっ!朝一のビールも最高♪)
槍~穂高の稜線は携帯が使用できるので、メールを送ってみる。
三蔵からは「朝一からビールかよ(怒)」と返事がきた。
このレポを読めば、飲みたい気分が分かるだろう。
何しろ双六小屋を出発してから、水を一口飲んだだけの「休み無し4時間連続の行動」だったのだから。
9時頃ちょっと空いてきたみたいなので「今がチャンス!」とばかりに列に並ぶ。
穂先の岩に張り付いていた待機中は、すぐ前後の男3人のグループやカップルに岩や鎖場、梯子の登り方のレクチャーをした。(一人前気取りか?)
頂上では順番で記念写真 並んでいる後ろの人にカメラを託して撮影
自分の初心者の頃、不安で一杯だった様に、経験者は危なげな行動をしている人を見かけたら、親切に教えてあげたほうが登山全体の為にも良い筈だ。
皆の大好きな登山の安全の為にも経験を伝授して、初心者を親切に導く先輩になろうではないか。
悲しい山の事故が少しでも減る事を望む。
やれやれと、肩の小屋でもう1回ビールで乾杯?!
今度槍の穂先に立つ時は、「北鎌のゴールだ!」と静かに心の中で誓った。(11:11)
大喰岳(3101m) その頂上、ビールが汗になって噴き出る
中岳(3084m) 大勢が憩う頂上
南岳(3032m)への稜線
天狗原分岐 南岳頂上
槍ヶ岳山荘から次の南岳小屋までは日程消化のコースと思っていたが、そんなに甘くは無く、しっかりと大汗を掻いて大喰岳(3101m)・中岳(3084m)・南岳(3032m)と通過して本日の泊地南岳小屋(3000m)に到着。(13:19)
南岳小屋(3000m) 今日の泊地
山の午後は天候が変わると言うセオリーの通り、ガスが吹き上がってきて、寒くなってきた。
小屋に逃げ込み、テン泊(30張)の申し込みと最後の一食分というカレーライス(また?)を注文してお昼ご飯にした。
テント設営後は寒くなって来たので寝袋に籠り、持参のビーフジャーキーと天然水割りで寛ぎ、明日(大キレット越え)に備えた。
四日目は、2004年に登山を始めて以来の課題、大キレット!
いよいよ、大キレット越えの朝が来た。今回の山行のメインイベントだ。
登山を始めた = いつかは北アルプス
= 聖地上高地
= 河童橋と清らかな梓川、神秘的な大正池
= バックは残雪の穂高連峰
= 憧れの槍~穂高の稜線
= 難所大キレット
= 上級者しか寄せ付けない・・・。
山こじでなくても連想するとこんな感じだと思う。
小屋番さん曰く、「ヘッデン装着での大キレット進入はお勧めできない」と言う通り、そんなに甘いルートではない。ここは大人しく明るくなってから行動開始。
夜明けは冷えたらしく、フライシートの結露が凄い。さっさと罰ゲーム(食事?えさ?)を済ませてテントを撤収する。
朝日が昇り始めて小屋泊の人もカメラを手にポツポツと出てきた。
テン泊の者は食事をしたりテント撤収の最中で忙しい。
準備が終わって大キレットに向かった者は、まだ見当たらない。
皆が御来光に見入っている隙に、獅子鼻岩の横の大キレットの入口に向かう。(05:23)
ここからは情け容赦の無い、ガレガレの急降下の連続の岩稜が続く。
いつもの様に朝日が昇る・・・ しかし、大キレットを前に緊張の朝だ
南岳小屋(3000m)から最低鞍部(2748m)までの約250mの急降下だ。
御来光の撮影をしている人達がザックを背負って来る前に先行しなければ渋滞に捕まってしまう。
気を引き締めヘルメットを被り、いよいよ大キレットへ進入だ。(05:30)
いよいよ悲願の大キレットにトライ! 下り始めて間もないので緊張している
大キレットは最初は石屑の道をスリップに注意しながら進み、鎖場等を降り、鉄梯子を下り、急降下してやっと一息つける場所、最低鞍部に降り着く。
北穂までの悪場の全貌が見えた! 先行パーティ発見!(最後尾が、あさかさん)
振り返ると後続の登山者が悪場で苦労しているのが見える
言葉では簡単だが、この行程だけでも結構緊張の連続で汗びっしょりだ。
下り始めた時に先行3人組、後ろに単独1人だったのだが、先行パーティーの3人が小休止を摂るというので、自分も上着を脱いで身軽になる。
ここでガイドと女性の2人パーティーの後ろで共に行動していた、あさかさんと出会う。
リーダーのガイドが先行を勧めるので、お言葉に甘えて先行させて貰い渋滞の無い大キレットをマイペースで進む事になる。(ラッキー♪)
最低鞍部(ほぼ中間地点)から見る南岳方向・・・これを降りてきた
同じく最低鞍部から見る北穂高方向・・・ポツンと北穂小屋が見える
誰にも邪魔されていないので、マイペースで歩ける。 立休み程度を繰り返しHピーク(2841m)まで一気に進む。(06:41)
最低鞍部付近のテントサイト Hピーク
Hピークを過ぎた先の桟橋 A沢のコル
振り返ると後続のパーティーの奮闘ぶりや渋滞が良く見える。 何かあったら痛いでは済まない難所なので皆真剣そのものだ。 顔が引きつっている人もいるだろう。 怖がったり、疲れて動きが遅くなったりする人がいると、即渋滞が発生する。幸い山こじの後ろには5分以上のマージンがあるので余裕がある。
ここまでは運よく渋滞無しで順調に越えて来られたが、A沢のコルで初めて逆コースの北穂から下りてきた登山者と出会う。(07:00)
いよいよ、これから先は譲り合いながら登ることになる。 ペースは落ちるが仕方がない。 ルートの状況に合わせて譲ったり譲られたりして、悪場はやり過ごさねばならない。 ここはすでに北穂高岳の直下だから、人が上にも下にもいたりするので、落石の危険をより一層注意しなければならない。落石は自分が起こさないのは言うまでもない。 もちろん、誰が落としても即、重大事故につながる。
オッサン登攀中 たぶん・・・飛騨泣き付近
たぶん飛騨泣き(しつこい?) 真ん中上に北穂小屋
ステップが設置してある(過保護?) 痩せ尾根を通過
悪場終了、あと200m 北穂小屋到着、大キレット終了
飛騨泣きを越え(と言っても似たような気の抜けない難所だらけだが・・・)、滝谷展望台を過ぎ、無我夢中で進み、やっと大石にペンキで書かれた「←北ホあと200m」を見る。(07:54)
少し名残惜しいが核心部は終了したみたいだ。 最後は、傾斜も緩くなり、北穂高小屋直下をジグザグに登り、遂に大キレットの終了点、北穂高小屋に到着。(08:16)
大キレットと言えばこのアングルで決まりでしょ♪
何と表現したら良いのか解らないくらいの景色が展開されている。
「これこれ! この景色最高! あ~、ガイド本で見たことがある」そういう声も聞こえるくらいだ。
本でも紹介され、写真でも、嫌というほど有名な、山こじの憧れだった大キレットの展望が現実となった。
ガイド本でしか知らなかった憧れのテラスに座り、またしても、ビールで乾杯!!(ウヒョ~最高だぜぃ♪)
北穂名物、雲上のテラス 景色をつまみにビールが旨い!
しかし、現実は、風が物凄く強く寒いテラスだ!
何しろ標高が3100mもあり、北アで一番高い所に建つ山小屋なのである。
(富士山の山小屋を除けば最高所の山小屋である)
だから風当りも寒さも半端じゃない! 急いで上着を着込み体温の低下を防がねばならない。
ガイド本で3時間半かかる行程を渋滞知らずのマイペースで歩けた為、3時間かからずに到着できた。
後は涸沢岳を越え、白出のコルに建つ穂高岳山荘までの2時間ほどの行程だ。 早くもまったりムードで緊張が解ける。
ここで出会ったNagaiさん(カリマーのザック)やあさかさん達3人(ガイド+女性)が先行していくのを見送り、自分は景色を楽しみながら寛ぐ。
このテラスは最高のロケーションで、文句は無いのだが、そのぶん風当たりも強く寒すぎる!
しばらくは我慢していたが、やはり寒い!無理!!限界!長居は出来ない!!
一人では時間もつぶせないので今日の泊地、穂高岳山荘のある白出のコルを目指し出発。(09:17)
北穂北峰高頂上3100m(小屋のすぐ裏) 北穂南峰3106m
北穂高小屋のすぐ後ろの石段を10秒も登ると、北穂高岳北峰のピーク(3100m)だ。
そしてピークを降り、着いた所が松濤岩のコル、南峰(北穂高岳の最高点はこっち)を巻き、やがて涸沢への分岐を過ぎ、いろいろ(よく覚えていない)歩いて最低コルに到着。(10:15)
涸沢方向 最低コル・・・これから登りです
ここから涸沢槍の登りに取りかかる。 北穂高岳~涸沢岳間も大キレットと同じ緊張を持続して掛からなければならない危険な個所の連続だ。
涸沢槍のピークを越え降り着いた所がオダマキのコル。(10:39)
涸沢岳(3110m)
最後の登りを前に 涸沢岳(3110m)頂上
ここで、小休止(エネルギー補給中)している、あさかさんと再会。 ガイドさん達2人とは涸沢の分岐で別れたらしい。ここからもうひと踏ん張りで頂上だ。
あさかさんと最後の登りを終え、やっと涸沢岳(3110m)に到着。(11:11)
終わった~♪ 今日はもう登らなくて良いのだ♪
頂上からは真正面に奥穂高岳が立ちふさがり、眼下には、「よくぞここに建てた」と思うほど立派な穂高岳山荘が見えている。 あとは下るだけなので、ゆっくりと休憩を摂る。
同じ理由で寛いでいる小屋泊のNagai さんとも再会し話が弾む。
今日ジャンダルムで事故が発生したらしくヘリが騒がしく飛んでいたそうだ。(落石による受傷事故で、男女2名が負傷したらしい)やはり油断は禁物のコースなのだ。
お腹も空いたので、30分程休んで、穂高岳山荘(2996m)へ下る。
素晴らしい石畳テラスの穂高岳山荘、この標高で信じられないほど平らな空間
穂高岳山荘はガイド本でもお馴染みの石畳のテラスが素晴らしい。
初代の今田重太郎さん、2代目のアイデアマンの今田英雄さんやスタッフの永年の苦労の賜物だ。
今では3代目の娘さん今田恵・公基夫婦に経営のバトンは受け継がれた。
初代今田重太郎氏が大正12年(1923年)24歳の時に山小屋の必要性を感じ実地調査を始め、翌年石室を造り穂高小屋の基礎を作ってから創立90周年、ますます快適な山小屋を目指して行くのだろう。
元気なスタッフにテン泊の申し込みをして、お昼ご飯にカレーライスを注文。
あさかさん 「またカレーですか?」と呆れていたが、
山こじ 「うどんもそばもラーメンも同じ値段だったら、何にする?」
あさかさん 「それじゃあ、やっぱりカレーですね!」
登山は、腹が減るのでガッツリ系に限る。 穂高岳山荘のカレーも美味しかったですよ。
白出のコルに目一杯、山荘と石畳が広がるので、テン場は狭くひな壇式だ。 少ないテン場(25張)は早い物勝ちなので、選べるほど空いている時間帯に到着していてラッキーだった。
最高のロケーション 落ちれば涸沢まで一気に到着できる
元気いっぱいの好青年、あさかさん
テントから奥穂が見える
前穂北尾根(バリエーションルート)が最高!
テン場のロケーションは奥穂高岳(3190m)が圧巻で、前穂高岳北尾根も目の当たりだ。
下に眼を向けると涸沢ヒュッテ(標高2309m)が見えている。 涸沢の紅葉もヒュッテ付近は既に始まっているみたいだ。
時間は充分あるので、あさかさんと山こじも昔やっていた剣道の事、自転車の事、そして登山の事etc・・・、いろいろな話題を天然水割を飲みながら語った。
小屋泊の混雑具合は知らないが、テン場はいよいよ詰まってきて、場所を求めて人がウロウロしている。他人が大変な時に悪いが、最後の3000mの稜線の夜が更けていくのをのんびり過ごしながら酒を飲む・・・、しあわせ♪
最終日、白出のコル(2996m)から一気に標高を下げ新穂高(1090m)へ
う~~寒い!フライシートは凍ってしまっていた。 下界はまだまだ残暑が厳しいのに、北ア穂高の稜線には早くも冬が迫ってきている。
北アの大概の山小屋は初氷、初雪と冬の兆しを見た後、10月の半ば頃に小屋閉めをする。北アと言っても黒部などの北部はもっと小屋締めは早い。
北ア南部の上高地に属する穂高岳山荘の今季の小屋締めは11月4日まで頑張るそうだ。 最近の最低気温は0度~6度と関東では真冬の気温だ。
これからの秋山~初冬のシーズンはハイカー気分で済まされた観光登山ではなく、どっぷりと山の魅力にい取りつかれた山ヤの領域だ。
そして何回かの降雪を重ね、根雪になり白く覆われると人を寄せ付けない静かで永い冬を迎える。
最終日まで晴天に恵まれた旅だった
フライシートが凍っているので、あまりの冷たさに指が悴む。 あさかさんが一足先に撤収を完了し、元気に出発して行った。
彼も今日が最終日で、奥穂を越えて岳沢から上高地に降りるそうだ。 お元気で、これからも楽しい山行を!
山こじは新穂高温泉側に車を停めてあるので、白出のコルを降りる。(05:47)
大小の岩で埋め尽くされている白出のコル、雪渓が見えている
初日に見た白出のコル(雪渓が真ん中に見えている) 下るだけでも大変!
白出のコルは穂高連峰の稜線と交通機関を結ぶ、最短のルートだ。
見渡す限りの沢幅いっぱいを幾重にも重なった岩で埋め尽くされているが、昔から穂高岳山荘のスタッフが荷揚げに使用しているので整備もされている。
初代今田重太郎氏は下の上宝村で今田館という宿屋もやっていたらしい。
もちろん「常さん」と松濤明が親しんだ内野常次郎氏とともに、上条嘉門次翁の弟子の一人だから山案内人(ガイド)もやっていた。
名ガイドだったらしい。 その当時からの荷揚げの道だ。
しかし登山道の形態は毎年の積雪が変化させるので、山荘からしばらくは大小の岩が折り重なり沢床を埋め尽くしたガレ場だから、ペンキマークを見落とすと、どこが道だか分からなくなる。
多少は道を外しても大差は無いので浮石(といっても大岩だが・・・)に気を付けて、足首や膝などを痛めぬ様に丁寧に降りる。
ただひたすらに下降あるのみだ。
ず~と足元ばかりを見ているので、時々振り返ってコルを見上げると小屋の人が眺めているのが分かる。
下る一方とは言え、汗が頬を伝わるほど吹き出してくる。 足元の注意以外には、頭も考える事を止めてしまっていて、時間の経過が分からなくなってきた。
やっと、下り始めに遥か下の方に見えていた雪渓の所まで降り着き、コルを見上げると、まだ小屋泊の人が見ていた。((06:26)
荷継沢 、疲労が顔に出ている
荷継沢通過。(07:18)
ここは初代今田重太郎氏の穂高小屋の時代からの荷物の中継基地で小屋があったらしい。
白出の大滝を巻きフィクスロープや梯子を降りて、今日初めての登山者と出会う。 5日振りに下山する山こじを労ってくれた。
彼は「僕はこれからが大変です」と言う、若者の健闘を祈る。
鉱石沢出合、初日のクリヤ谷以来の待望の水場だ。(07:46)
急峻な渓谷 水場でひと息
冷たい沢水で顔を洗い、喉を潤し、生き返る心地だ。 さっぱりしたところで気合を入れ直し出発。
小尾根を廻り込むと、崖沿いの道になり、人工的に岩をえぐった岩切道と呼ばれている道だ。 黒部の下の廊下と同じように、沢伝いの道を人工的に作った先人の苦労が偲ばれる。
岩切道 急峻な渓谷沿いに人の手により造られた
岩切道が行き詰まったと思ったら、下に降りる梯子があり、沢に降りると角材で木橋が渡してあった。(08:00)
梯子で沢に降りて・・・ 重太郎橋を渡って対岸に
ここが重太郎橋だ。古いガイド本(1987年)では鉄製の立派な橋と紹介されているが、2013年版の山と高原地図では「大雨の時は渡渉不可」と表現されている。
以前の橋は雪崩等で壊され、頑丈な橋の建設を諦めたのであろう。 この道を通るのは、ごく限られた物好きの登山者か小屋関係者くらいだろうから、採算が合うはずもない。
無事に対岸に渡り、いよいよ樹林帯の中に入る。 傾斜も緩くなり歩きやすい。 しかし、獣の匂いがする様な気がして、熊鈴を取り出し、鳴らしながら進む。
変化のない道を延々と歩いて飽きて来た頃に、いきなり蒲田川右俣林道に出合う。(08:46)
遂に降りてきました奥穂登山口 ここからは林道歩き
小屋跡の広いスペースには穂高岳山荘の名前の入ったランクルが駐車してあった。 ここからは単調な林道歩きだ。歌でも唄いながらひたすら歩くのみだ。
穂高平小屋 林道ゲート
穂高平小屋(1340m)に着きコーラを注文するが、シーズン末期で在庫が無くなったそうだ。
林道終点のゲート通過。(09:54)
新穂高ロープウェイ駅 スノーシェルター、歩きだと怖い!
新穂高ロープウェイ駅(1100m)着。(10:08)
時刻表でバスがすぐには無いのが分かったので、中尾高原口まで車道を歩く。 初日の深夜に行き来したスノーシェルター部分は、車との距離が近いので恐怖を感じた。
車ではあっという間に通過しているのだが、歩くとなると、さすがに遠い。
天候に恵まれた、4泊5日の山旅の終了♪
やっとの思いで駐車してある中尾高原口(980m)に到着。(10:43)
大汗を掻いたシャツなどを着替え登山靴を脱ぎ、やっと4泊5日の山旅が終わった事を実感した。
帰りは道の駅に立寄り土産を買っただけで、12時前には本格的に運転し、自宅に到着。(15:20) 渋滞無し、温泉無し、名物無し
だが、唯一思い出が宝物になった山旅だった。