2015.10.2~5
山こじ通信 vol.46  錦繍の北ア
                 白馬~朝日~蓮華周遊


 
               烈風が吹き荒れた一日目の夕日 白馬山荘にて

                 山行行程 (2泊3日) 2015.10. 2~4         
 第一日目  予定歩行時間 6時間30分   (撮影+小休止 5時間37分)

・・09:15・・・・・・・・09:18・・・・・・・・10:18・・・・・・・11:47~12:10・・・・・・・・・13:47・・・・・・・・・14:22・・・・・・・・
栂池高原P自然園駅(1:10)天狗原(1:50)白馬大池山荘(1:50)小蓮華山 (30) 三国境 (1:00)
・・・・・・・・・・・・・・1830m・・(1:00)・・・・・・・(1:29)・・・2380m・・・・(1:27)・・2769m・・・(35)・・2751m・・(52)

・・15:14・・・・・・・・・15:28
白馬岳 (10) 白馬山荘(泊)
・・2932m・・(14)・・2840m
・ 
 第2日目   予定歩行時間 7時間 5分   (撮影+小休止 5時間 8分) 

・・06:50・・・・・・・・・・07:05・・・・・・・・・07:37・・・・・・・・08:05・・・・・・・・・・08:40~09:01・・・・・・・・・・09:38
白馬山荘 (15) 白馬岳 (40) 三国境 (40)鉱山道分岐(50)雪倉岳避難小屋 (50) 雪倉岳
・・2840m・・・・(20)・・2932m・・(32)・・2751m・・(28)・・2504m・・・(35)・・・・2400m・・・・・・・(28)・・2610m

・・(休26分)・・・11:36・・・・・・・・・・・・・・12:49
・・(2:00) 水平道分岐 (1:50) 朝日小屋(泊)
・・(1:32)・・・・・・・・・・・・・・(1:13)・・2150m・・・・・
 第3日目    予定歩行時間  6時間20分  (撮影+小休止 5時間41分)

・・06:07・・・・・・・・・・・・06:54・・・・・・・・・・07:15・・・・・・・・・・・・・・08:36・・・・・・・・・・・・・・09:26・・・・・・・・・・
朝日小屋 (1:00) 朝日岳 (30) 千代ノ吹上 (1:10) 花園三角点(1:10)白高地沢出合(1:00)
・・2150m・・・・・
(47)・・2418m・・・(21)・・・・・・・・・・・・・(1:21)・・・1753m・・・・・(50)・・・・・・・・・・・・・・・(54)

・・10:20・・・・・・・・・・11:02・・・・・・・11:48・・・
瀬戸川出合(40)兵馬ノ平(50)蓮華温泉
・・・・・・・・・・・・(42)・・・・・・・・(46)・・1470m

 ・・・・・・・?   ・・・・・・・!

バクダン・・・?+テイキアツ?= 爆弾低気圧!!

 ワォ!!何てこったい!

今秋の山行はギリギリで台風をうまく避ける事が出来た♪・・・と思っていたら、何と!台風から転じて爆弾低気圧になってしまった!!

  ♪俺らはドラマ~ やくざなドラマ~

          俺らがおこれば嵐を呼ぶぜ~・・・♪

・・・怒ってないから、嵐なんか呼んでいないから、こっちに来なくていいってばっ!

 季節は秋真っ盛り! 紅葉のシーズン! 

皆で何処かにいこうよう(?)てな訳で観光地の何処もかしこも、もちろん山も高速道路も大混雑! 
そんな訳で例年の如く、職場の皆さんには多大なご迷惑をかけ、最強の日程「金・土・・月」の日程で錦繍の北ア・白馬へ♪・・・行かせていただきました。

シルバーウィークの後を狙い、上手く高速道路の大混雑を避けて計画したつもりだったのに、そんなに世の中甘くは無かった・・・。 

ニュースによると・・・
「台風は猛烈な爆弾低気圧に発達し、厳重に注意をしてください・・・」 

「爆弾?」 「猛烈??」 なにそれ? 聞き捨てならないゾ。

爆弾低気圧というだけで十分なのに、猛烈という過剰な形容詞は要らないだろう!
それでもやっと貰えた秋休み! 麓白馬村の天気予報は晴れという事を信じて出発をした。

 1日目 (102日 金)

 

所沢から白馬方面へ行くには関越道利用のルートが若干近いのだが、天候が悪そうだし、足繁く通った北ア巡礼で距離感が身に着き、走り慣れた中央高速利用ルートを選ぶ。深夜の高速道路は最初はおとなしく何事も無く進んだのだが・・・。
甲府を過ぎた辺りからポツポツと雨が降り始め、あっと言う間に猛烈な横殴りの風と雨!ウ~~ンワイルド!

「さあ、お出でなすったゾ!」 緊張したドライブに身が引き締まる。
こんな状況でも大型トラックなどのデカイ車は強風なんか物ともせずにブッ飛ばして走っている。
車重の軽い乗用車は風に翻弄されて、あっちにフラフラ、こっちにフラフラ・・・、スピードなんか出したら事故必至!
ましてや新車のハチロクはこれまでの三菱アウトランダーみたいな四輪駆動車ではない。コーナーリングが面白く良く曲がるスポーツタイプだ。 
 って事は下手な車線変更やアクセルオフでスピンすらしかねない。
(過去に何度か経験している)
心して掛からないと事故を起こしてしまう! ハイドロプレーンに注意し、慎重の上にも慎重な運転でやっと安曇野ICで高速を降りる。(ヤレヤレ)

 ここからは一般道で走り慣れた北ア登山の通勤コース(?) 半分地元感覚で落ち付いて走れる。 
車速も下がり騒音も無くなったので、土砂振りも何のそのだ。前回も利用した「道の駅白馬」まで何事も無く到着。
ヤレヤレ、やっと休憩できるぞ~~。

それにしても、「道の駅」は大変便利な施設だ。 自販機やトイレはもちろん、帰りのお土産だって購入できる。 
長時間の運転で疲れた体を、広い駐車スペースで休める事も出来る。 

青春真っ盛りだった昔のサイクリング時代にはコンビニすら無かったオッサン世代には夢のような施設だ。
あのころは田舎の「よろずやさん」でサバ缶などを手に入れるのが関の山だった。 

えっ~~「よろずやさん」を知らない? 教えてあげましょう。 

「よろずやさん」とは「万屋」とも書き、あらゆる商品(日用雑貨から文房具、生鮮食料品etc・・・)を売っていて、「田舎の極小規模個人経営的スーパーマーケット」とでも言うのかな。 
木造店舗の壁にはアース渦巻きの由美かおるや水原弘、ボンカレーの松山容子、オロナミンCの大村昆ちゃんなどのブリキの看板が飾り、さらにおたふく綿や力王の地下足袋、たばこや公衆電話の看板などがぶら下っていたら、究極の万屋さんだ。 
それらのブリキ(ホーロー製)の看板は今やマニア垂涎のお宝になっている。

 zzz・・・少しだけウトウトしていたら、夜が明けてきた。 雨もだいぶ小降りになり、天気は回復傾向間違いなしだ!
道の駅を出発して栂池高原へ向かう。 早朝の国道はガラ空きで栂池高原の有料駐車場に難無く到着。
冬のシーズン中は混むのだろうな・・・。

     
        栂池高原駐車場
                   有料だが人の眼が多い方が安心

 駐車場で服装を整えたり、ザックの中身のチェックをしていたら料金収集の女性が来て、この先4日分の2000円を支払う。500円×4日)。 
女性にゴンドラの始発の時間を確認すると、「今日は風がとても強いのでゴンドラが運転できるかどうか心配」だと言う。 

「えっ~~~それは困る!」

ゴンドラの始発が8時なので駅へと移動するが、係りの人から「強風の為、現在運転見合わせ中」と告げられる。
自然園での紅葉散策を期待して集まった人達と不安な時間を過ごす。

山こじは駐車場で知り合い諏訪から来た75歳の男性と山談義をして、昔の登山ブームやスキーブームの頃の興味深い話を聞きながらひたすら時間を待つ。
もしゴンドラが動かないと分かっていたならば、5時からでも歩いていたのに・・・。

待つこと1時間の9時に運転開始決定♡♡♡♪ 良かった、時間的にそんなにロスしていない。 
ゴンドラリフト「イブ」栂池ロープウェイを乗り継ぎ、紅葉の山肌を眼下に眺めながら、栂池自然園駅に到着。(0918

     
   
ゴンドラ・リフトを乗り継ぎ舗装路を歩く             ハイカーと別れ登山道へ

     
           銀嶺水
                         水場だが飲めるのか?

舗装された道を歩き、栂池ビジターセンター前から始まる登山道入口で他のハイカーや男性と別れ、いよいよ山登りの開始だ。

雨雲が過ぎ去った秋晴れの下、石畳で整備された登山道を登る。雨上がりの為足元はぬかるんでいるので、石畳が有難い。 
照りつける太陽と雨上がりのせいで、いきなり暑くなり、汗が噴き出す。 銀嶺水に着いた時には、すでに汗びっしょりだ。(0959

山肌は紅葉の真っ盛り、美しい紅葉に見入り、一息入れてさらに頑張る。

青空が近くなり、視界が拡がるとそこは天狗原。(1018

     
          紅葉が綺麗だ
                       すでに汗びっしょり

 
                白馬乗鞍岳が近い、ハイカーが憩う天狗原

これこれ! 今回の緩~~い登山が目指していたのは、紅葉を楽しみながらの秋山ハイクだ。

天狗原は高層湿原で初夏にはヒオウギアヤメやワタスゲが一面に咲き、ハイカーには堪らない所らしい。 
整備された木道を進むと風吹大池への分岐、更に進むと巨岩のゴロゴロした所に差し掛かる。 
巨岩の間を縫うように登り、途中で振り返ると天狗原が一望出来る。

 
                      振り返って眺める天狗原
 

さらに登高を続けると、次第に風が強くなり始め、山頂のだだっ広い白馬乗鞍岳の一角に近づいて来たのが分かる。 
登り切る前に、防寒対策の為フードを被り、万全の準備で最後と思われる登りを過ぎると、・・・

びぃゆぅ~~~!びぃゆぅ~~~~~~~!!

     
  
頂上は風が強そうなのでネズミ男に変身           最高点ではないが乗鞍岳頂上

 
                  
だだっ広い白馬乗鞍岳、小蓮華岳が姿を現した

「どひゃ~~」写真では伝わりにくいが、とんでもない暴風が吹き荒れている。 

たぶん風速では10mを越えているだろう。 耳元でフードバタつくのでうるさくてしょうがない。 
露岩を石伝いに歩きながら、白馬乗鞍岳の目印のケルン(2436mに到着。(1122

ちなみに白馬乗鞍岳は溶岩円頂丘で一面がハイマツに覆われ、広くて何処が頂上か分からない。
ガスで視界不良の時に、道を迷わない様に大きなケルンがある。 
実際の最高点はケルンの南西に2456m地点がある。

強風の吹き荒れる中ケルンを後に、さらに進むと、「えっこんな高所に?」と思うくらい大きな白馬大池が見え始めた。
白馬大池小屋の近くで単独の女性とすれ違う。 
後で小屋番から聞いたところ、彼女は「この強風に危険を感じ、白馬岳登頂を諦めて白馬山荘のキャンセルを申し出た」そうだ。

 
                        
白馬大池と大池小屋

 こんな風の中ではとてもじゃないが外では食事出来ないので、カップ麺を注文して室内で休憩する。(1147
天狗原で追い越した団体さんは、なかなか来る気配が無い。 皆頂上を諦めたのか?
何時までもここに留まっている訳にはいかないので、再びフードを被り覚悟を決めて出発。(1210

     
           雷鳥坂
                          白馬大池を見下ろす

なだらかな坂が小蓮華山へと続いている。向かい風に耐えながら歩を進める、ここは雷鳥坂だ。
御多分にもれず、雷鳥君と遭遇。この時期の雷鳥は足元の羽が白くなっている程度だ。
厳冬期の登山は出来ないけれど、真っ白な雷鳥も見てみたいものだ。

     
           雷鳥君
                          足元の羽が白い

天気は快晴だが、風が物凄い。写真では伝わらないのが悔しいけど、気を抜くとよろけてしまうくらいだ。
風の強さの表現の順番は良く知らないけれど、たぶん、強風<暴風<烈風の順番だとしたら最上級の烈風だと思う。

 ちなみに後で知るのだが、この日は風速22m/の風が吹いていた。

1分は60秒、1時間は3600秒・・・3600×22m79200m=時速で80㌔に近い計算だ。

これは高速道路を走っている時に顔を出しているのと同じだ。 
どおりで顔を下に向けなければ息が出来ないと思った。
登山道の勾配と風向きがリンクしているので、歩くスピードが遅くなってしまう。
でも風が強いので汗ひとつ掻かず、休まずに前進できるが・・・。

とは言っても何処にも休む所など無い稜線での吹きさらしの状態だ。

・・・・・。(汗) ・・・・・。(苦) 
         
      やた~~♪

耐えに耐え、やっと頂上の大きな鉄剣が象徴的な小蓮華山(2769mに到着。(1347

 
                  青空に映える鉄剣、小蓮華山頂上

     
          
ネズミ男見参!!                   触っちゃたぁ~♪
                                   (嘘です、掴んでいないと飛ばされそう)

 小蓮華山には大きな鉄剣大日如来が祀ってあり、信州側では大日岳と呼ばれていた。
2007年には山頂部が崩壊してしまったが、後立山連峰では数少ない信仰登山の対象になった山である。

     
       写真では素晴らしい景色・・・
                 現実は暴風との戦い

吹きさらしのザレた道を下る、前方には、特徴的な山頂を持つ白馬岳をロックオン!

 
               特徴のある山頂、白馬岳をロックオン!!

やがて三国境(2751mに到着。(1422

 
               
三国境。 中央に雪倉岳、左に鉢ヶ岳その奥に朝日岳

長野・新潟・富山の県境である。明日登る雪倉岳・朝日岳が見え、ズームアップすると朝日小屋まで見える。 
結構遠いなぁ~。
 さて、目指す白馬岳は・・・と!

 
                山肌からたなびく雲で風の強さが・・・

物凄い事になっている!! 
あの雲のちぎれ方では、稜線は暴風が吹き荒れている事間違い無しだ。

稜線に出る前に吹き溜まりになっている東側で一息入れる。

     
      風よけの場所から山頂を望む
               稜線に出るには覚悟が必要!

風さえ無ければハイキング気分で歩ける稜線だが、今日の風では稜線に出るのに勇気がいる。

登山道にはコースから外れないようにロープが張られている。
ロープを止めている鉄棒が倒れて転がっているのに気が付き、杖として使わせてもらう事にした。
ストックでは柔らか過ぎて地面にも刺さらないし、心もとなくて使えない!

     
      
利用できるものは何でも使う                  武器を手に出陣!!

覚悟を決め稜線に飛び出る!

○×△ギャ~~、 
    ●■☆△どひゃ~~~。

物凄い強烈な風!   耳元で猛り狂った様な爆音!

着ている服が無茶苦茶にバタつく!
                     ザックと背中の間に風が入ると、40ℓのザックが暴れる!

体が浮き上がる度に、中腰になり重心を下げてやり過ごす!
                              忍者の如く、中腰のまま小さな歩幅で進む。

「あっ頂上の風景指示盤見えた!」

     
        慎重に・・・慎重に・・・
                    あっ頂上(2932m)だ♪

「もう少し」 「あと少し」 慎重に少しづつ少しづつ進む!・・・

遂に頂上へ到着、風景指示盤の根元に倒れるようにして身を隠した。(1514)

眼下には持ちこがれた白馬山荘が見え、杓子岳・白馬槍ヶ岳、遠くに剱岳が見える。

 
         
左に杓子岳(2812m)・白馬鑓ヶ岳(2932m)、 雲から頭を出している剱岳(2999m)

白馬山荘に到着。(1528) ・・・・・戦いは終わった。

山荘の中に入ると同時に、今まで耳元で猛り狂っていた騒音も止み、暖かく静かな空間がそこにあった。 
受付で話をしていても、しばらくは指に感覚が戻らなくてストーブで暖めないと宿帳の文字も書けなかった。

 
                    遂に到着した、憧れの白馬山荘

     
         山荘3階の様子
                      布団2枚に4人!(うふっ?)

     
    今日は6畳間に1人 (リッチな気分♪)            
美味しかった夕食♪

 
                山荘の窓越しに見る雲海と夕焼け、右は旭岳(2867m)

白馬山荘の談話室のストーブを囲んで、同宿の人達と今日の風の事、明日のルートなど話しながら宴会を楽しんだ。
この日はキャンセルが多く、全員でも10人程度だった。

日本最大の収容人数を誇る、大人気の山小屋で、グループは1部屋、単独は1人に1部屋があてがわれ、余裕の一夜を過ごせた。

 ○過去の事例

2006 年の107日北アルプス・白馬岳の稜線上で7人パーティが遭難、4人が低体温症で死亡した。
一行は山岳ガイドが募集したツアー登山で、祖母谷温泉から雨の清水尾根を登り、標高2750mの稜線に出た地点で猛吹雪に遭い、あと少しで山小屋というところで4人が倒れた。 
急激に発達した日本の東海上の低気圧に大陸から寒気が流れ込み、7日は冬型の気圧配置になっていた。 
白馬岳一帯は風速20m/s超える吹雪だったとみられる。

 今日の白馬岳は吹雪こそ無かったが、台風から爆弾低気圧に変じるなど秋台風の通過後は天候の予測がしづらい。
秋の登山では防寒防風対策は厳重にチェックが必要だ。 物凄く緊張を強いられた一日だった。

※新田次郎氏の小説「強力伝」によると、白馬岳山頂の風景指示盤は富士山の強力だった小宮山正さんが一人で担ぎ上げたものです。
大きい石で50貫(1貫=3.75㎏として約187.5㎏)だそうです。
 

2日目 (103日 土)

 

 “昼間の風は夜には治まる、
             夜の風は昼には治まる”

・・・と言うけれど、就寝中に風は治まったのか?

起きた時点で気温は3℃位、風も相変わらず強そうだった。
外の様子を伺うまでも無く、ぴゅ~~ぅ びゅう~~という窓ガラスを揺るがす風の音にがっかりさせられた。

洗面所ですれ違う誰もが、不安げで浮かない顔をしている。朝早くから小屋泊の皆は天気予報の情報に飢えていた。 

そこに小屋番から天気の最新情報が発表された。
それによると昨日の風は風速22m/sで今日は19m/sらしい。がっかり・・・。

昨日よりはマシだが、あまり嬉しくも無い情報だ。 天気は快晴でバッチリなのだが、稜線歩きは要注意だ。 
白馬岳からは何処に進もうと稜線歩き、油断は禁物だ。 稜線でふらついたら転落事故必至だ。

     
         白馬山荘の朝食
                    白馬山荘のお弁当(パン食)

 
                 素晴らしい快晴の朝、しかし風は・・・Ohhh~モウレツっ             

何時までもグズグズしていては始まらない!

今日の目的地の朝日小屋までの道程を考えると時間の余裕はないのだ。 
覚悟を決め外に飛び出す。(0650

外は昨日よりはマシだが相変わらずの強風だ。
風が雲を吹き飛ばしたのか、素晴らしい景色が広がっている。 さあ気合いを入れて出陣!

昨日の鉄棒と変えて、レキのWストックを体の前で風向きに対し45度につっかえ棒の様に使いながら進む。 

急ぐ事は無い、安全に!確実に!

ゆっくりペースで頂上へ到着。(0705) 

昨日は立ち上がる事すら危険を感じた風景指示盤でも立ちあがって撮影できた。
写真を撮ったらこんな風当りの強い所に長居は無用だ。

ザレ道を下り三国境に到着。(0737

     
      昨日よりはマシだが・・・
                    相変わらず風が強い

強風を避けるように休憩している白馬大池から来た年配のグループに出逢う。
こんな場所で休憩していても辛いだけだと思うが・・・。
今日の目的地が朝日小屋と聞き、「それじゃ小屋で!」と言って別れた、彼らには相当辛い一日になるだろう。

     
       鉢ヶ岳(手前)、雪倉岳(奥)                   鉱山道分岐

 
                       
でっかい!雪倉岳(2610m)

白馬岳(2932m)から三国境(2751m181m下り、さらに鉱山道分岐(2504m247m下る。
目の前の鉢ヶ岳(2563m)は巻道を行き、雪倉岳避難小屋(2400m)までノンストップで500m以上も下りっぱなしの道を強風を突いて歩く。
立ち止またり、ぐずぐずしていると低体温症にもなりかねない強風だ。

雪倉岳避難小屋に着いた時には、本当に避難小屋様様だと痛感した。(0840

 162 

     
        雪倉岳避難小屋
                    小屋内部(朝日小屋が管理している)

避難小屋の中は朝日小屋の人が管理しているのでとても綺麗だ。 
ここで白馬山荘のお弁当のパンを一つだけ食べ、水を飲み、人心地ついた。
この強風の中じゃ白馬山荘名物のお弁当は広げられそうにもないので、パン食弁当にしてもらったのだ。 
休憩中に、朝日小屋を暗いうちから出て来たテン泊装備の2人が入って来た。 
早朝の霜の降りた木道で転び、肩を強打したらしく湿布を貼ったら、ろくに休みもせずにすぐに出発して行った。

若者はタフだな~。

彼らは昨夜も朝日小屋で強風の中テン泊し、今日は村営頂上宿舎でテン泊の予定らしい。

後続の人は誰も来る気配が無いので、お世話になった小屋の中を掃き掃除してから出発した。 
重い扉を開けると、外は相変わらずの暴風だ。 
雪倉岳の取りつきは、しょっぱなから、体ごと吹っ飛ばされそうな風と闘いながらの登高となった。 

ストックを2本とも体の前で45度の角度でつっかえ棒の様にして、左右の足で踏ん張っている幅の半分くらいの歩幅を摺り足で進む。
最近太っている山こじの体重でも地面から剥がされそうな風が吹くの中、ようやく雪倉岳(2610m)頂上に到着。(0938

後で聞いたが、雪倉岳は風が強い事で有名で、山頂にある御影石の山名盤は冬でも雪で隠れてしまう事が無いそうだ。

 
                     
雪倉岳頂上(2610m)にて

 
                   朝日岳の奥に日本海!

雪倉岳白馬岳方面からだと簡単に登れるが、朝日岳の方から見ると、結構立派な山体をしている。
広くて南北に長い稜線を歩くと、やがて東側へと導かれとジグザグの下りとなる。

ここは雪倉岳カールと言われ、池塘が点在し、その中でもひときわ大きいのが雪倉池である。 
道は雪倉池方向から西に向きを変え、ふたたび新潟・富山の県境稜線に戻るが、見上げると山頂からの稜線が断崖絶壁で終わっているのが確認できる。 
だから池塘の方向に巻いたのだと納得する。

 
               雪倉岳の稜線は断崖絶壁で終わっている

赤男山の脇を抜けている、ツバメ岩のあるガラガラの危険地帯を通る。(1047

     
            
ツバメ岩                           赤男山

ここでやっと暴風地帯と離れることが出来たと確信して、沢の流れる所で水浴びをして大休止をする。
ここは小桜ヶ原と呼ばれる高層湿原だ。(1055

ノンビリまったりの緩い秋山登山のつもりが、爆弾低気圧の暴風のおかげで、命がけのガッツ登山になってしまっている。 
ここらで緩い秋山登山に戻ろう。  紅葉に染まる景色の中での昼食は心が休まる。 秋空が綺麗だ・・・。 

     
        湧水で喉を潤す
                       素晴らしい秋山登山 

     
        快適な木道歩き
                          水平道分岐

休憩をしていると蓮華温泉から鉱山道を通り朝日小屋に手伝いに行く人と出会う。 
本当は1週間後の方が良いのだが、来週は仕事の都合で来られないからだと言う。 
鉱山道を通って来たのも登山道の情報収集の為で、地元の皆さんが朝日小屋を盛り立てているのが分かる。
地元に愛されているとても素敵な小屋だ。

ちなみに朝日小屋は普通の個人の営業小屋ではなく大蓮華保勝会という自然保護団体が所有しています。
風もなく穏やかな日差しを浴びながら木道を進むと、朝日岳山頂からのルートと出会う。 
ここからが悪名(?)高い水平道の始まりである。(1136

     
        水平・・・かな?
                         たぶん水平

     
         これでも水平??
                誰が何と言おうと水平なんだってばっ!             

何処がどうして水平なのか分からないが一般的に登山者は水平と聞くとホッとして油断をしてしまい、その結果が思った以上に上り下りで苦しめられるので評判が悪くなる。
いっその事、朝日岳巻道とした方が誤解も無くて良いと思うし、何よりも木道を整備され苦労をしている小屋の人達に不平を言っては申し訳ない。 
起伏があるのも自然や池塘を保護する為、その自然を満喫する為に登山をしているのだから、闇雲に水平にするのは本意ではない筈だ。

・・・とは理解しつつも、まだまだ未熟な山こじは上り下りの連続に大汗を掻き息を切らして、「小屋はまだかぁ~」と心の中では叫んでいた。 
時々現れる水平部分の木道で紅葉を楽しみつつ、難路続きの水平道と格闘すること1時間余り・・・、やっと小屋が見えた♪・・・と思ったら、直線では道が無く、大きく右に巻いてから朝日岳との合流点の水谷のコルで合流して、やっと朝日小屋行けるのだった。

     
          水谷のコル
                       牧歌的な雰囲気の朝日小屋

 
                       朝日平から望む白馬岳
 

これほど苦労させられた水平道という名前が本当に相応しいのか疑問を残しつつ、朝日小屋に到着。(1249
本日の宿泊客は28名で、指定された部屋は6畳に5人という山小屋としては普通の状態だった。 
もちろん朝日小屋でも忘れずに部屋の皆と宴会を楽しんだ。

 「何処から来たの?」   『○○○からです。』

 「どっちに行くの?」    『△△△方面へ・・・。』

これで初対面のやりとりは終わり、「へぇ~」とか「ほぉ~」とか各自が話題を繋ぎ飲み会延々と続く・・・。

ザックに忍ばせてきた「あたりめ」や「チーズたら」「ナッツ類」などの乾き物でも、一期一会の楽しい会話でビールや水割りの杯が進む。 
食事の時間が来るまでの宴会は3時間も続いた。

食事の時間には管理人の清水ゆかりさんから真心の感じるお話を頂き、手作り感いっぱいの夕食が本当に美味しかった。

     
          朝日小屋                            乾杯~~!

     
        朝日小屋の夕食
                        朝日小屋の朝食

 

3日目 (104日 

 

 
今朝は天気予報がはずれ、朝から雨だった。
管理人の清水ゆかりさん
が天気情報で、白馬山荘(2840m)は降雪していると教えてくれた。
こちらの朝日小屋(2150m)は標高が低いから、雨で済んでいるらしい。 
今日は急ぐ事も無い行程なので、呑気に出かけて行く人達を見送っていたら、一番最後になってしまい、あわてて外に飛び出る。
ようやく雨は小雨になり、蒸れて動きにくい合羽は着ないでに出発。(0607

     
     
小屋の前からの朝日岳(昨日)               今朝は雨雲で山頂は見えない

昨日は見えていた朝日岳の山頂部が雨雲で覆われて見えない。 
山頂は雨雲に突入必至の状態だが、今さら合羽を着込む気にはならない。

整備された登山道を一人黙々と登る。 自分の後ろには追従者は誰もいなくて前方はガスで先が見えない。

朝日小屋(2150mから朝日岳(2418mはひと登りの距離なのだが、山頂がなだらかなので、頂上が近いのか?頂上はまだか?まだか?と期待してしまう。
ガスで視界不良の朝日岳到着。(0654) 

     
     雨雲の中の朝日岳山頂(2418m)
              蓮華温泉と白馬方面との分岐

寒くはないが結構汗を掻いて濡れてしまった。 視界も何もないので写真だけ撮って先に進む。 
程なく白馬岳・雪倉岳方面への分岐だ。 こちらを選ぶと昨日の水平道の始まり地点の分岐に降りてくる。

視界は30m程、のガスというより雨雲の中をさまよっている感じだ。

少し下り、吹上のコルに到着。(0715

ここは日本海へと続く栂海新道蓮華温泉との分岐だ。晴れていれば日本海が見えているはずなのだが・・・。

 

栂海新道は「さわがに山岳会」の小野建会長を中心とした有志の方達が開拓した登山道です。
自然保護や登山道開拓の許認可関係など苦労を重ね、長い時間をかけて自らの手で日本海までの道を繋げ親不知海岸に到達しました。 
1894
年、W・ウェストンが白馬岳登山のとき、親不知の断崖を訪れて
「ここが日本アルプスの起点である」と記述したとあります。

残念ながら、会長の小野建氏20143月に亡くなられましたが、「ベニズアイ山岳会」会長の斉藤八郎氏がその遺志を継いで活動されております。
栂海新道上にある栂海山荘・白鳥小屋は営業小屋ではなく、計画の際は

「ベニズアイ山岳会」会長 斉藤八郎氏 自宅 0255452885

へ予約と確認の電話をお願いします。個人宅なので深夜電話etcなど失礼のない様にお願いします。
ご利用の際に登山道の刈り払いや協賛金としてお一人様2000円を篤志金として栂海山荘内に設置してある箱にお入れ頂きます様、お願いしておられます。  
                                                  (朝日小屋HPより)

 何気なく歩いている登山道も草の刈り払いや木道の整備、路肩の補修や梯子の設置etcと何人もの人達の汗と労力で維持されている。 
気持良く安全に登山を続ける為にも、大切に歩いて欲しいものだ。

吹上のコルから五輪山の山肌を巻く様に歩く。
沢状の歩きにくい道を通り五輪尾根を下ると雨雲よりも標高が下がったおかげで天気が良くなって来た。
一瞬だけの晴れ間を逃さず紅葉を撮影できた。

 
                       紅葉が拡がる

ここからは木道が整備されている池塘の点在する五輪高原だ。
その途中に花園三角点(1753mがある。(0836
その先からは急に下り、木道も無くなり急坂が続く、カモシカ坂だ。

再び雨も降りだし、汗を掻きながらの不快な樹林帯が続く。
ふっと突然現れた鉄の橋に一瞬訳が分からなくなったが、それは新設された白高地沢橋だ。(0926) 
この沢を昔は飛び石伝いに渡ったそうだが、今日の様な天気では増水していては渡れる筈も無く足止めを食ってしまう。 
頑丈な橋が出来て良かった。

     
    
 ガスの中、突如現れた白高地沢橋                   幻想的・・・

さらに蒸し暑い樹林帯を何度も登降を続け、再び橋が現れた。
ここが瀬戸川橋だ。(1020

     
            瀬戸川橋
                        橋の下は激流

 
                        頑丈な橋は有難い

さらに進み、兵馬の平。(1102

ここからは木道で整備され自然歩道になっている。 
温泉の匂いがしてきたので、ゴールが近いのが分かるが、何しろガスの中なので視界が利かない。

やっと現れた建築物を見間違ってキャンプ場に入ったりしながら、やっと蓮華温泉ロッジに到着。(1148

 
                     
ガスの中から現れた蓮華温泉ロッジ

さて困ったぞ。 
予定では早く蓮華温泉に到着して蓮華七湯(黄金の湯・新黄金の湯・蒸湯・薬師湯・仙気の湯・三国一の湯の6湯が露天で総湯(内湯)がロッジ内にある。しかしこのうちの新黄金湯と蒸湯は現在使えない。)を制覇して、山並みをバックに爽快な露天風呂・・・の写真撮影が目的だったのに、この視界不良ではお話にならない。

ロッジの宿泊は予約してあったのだが、運よくこの時期一日に2本しかないバス(1345発 平岩行)に間に合ってしまった。
ならばと日帰り温泉の料金を払って総湯だけ入ってさっぱりし下山することにした。

バスに揺られること1時間、JR大糸線平岩駅に到着。(1445

     
          
平岩駅                             日本海まで21㌔

     
       非常(非情)にシンプル
                     やっと来た~♪

片田舎の駅(失礼!)に降り立ち時刻表を見ると「うひょ~~~!!」

随分と端折った時刻表だった。待つことさらに1時間。
やっと来た列車は1両のワンマン車両(キハ120形)だった。 
さらに南小谷で乗り換え、白馬大池駅に到着。(1630

栂池行のバスの時刻表を見ると、またまた「うひょ~~~!!」

 
                        絶句・・・・・・

一日に2便しかないじゃないか。自販機でジュースを買っているそばからバスが到着。

乗りこむお客は自分一人。 そうだ今日は日曜日だった。
平日だったら高校生が通学に使うらしい。 運転手と会話しながら栂池高原Pに到着。
帰りのバスにはお客が56人乗ったみたいだ。

こんな寂れた所では何も出来ないので、車を走らせ白馬駅前へ。

観光案内所がしまっていて、宿が探せない! 困った!!

迷惑とは思ったが、駅前の白馬館へ向かう。

あの~、白馬山荘にお世話になって下山して来た者ですけど~」

『どんな御用でしょう』

「ご迷惑とは思いますが、この近くでホテルを紹介して頂けませんか」

『大丈夫ですよ』

「有難うございます♪」

という訳で、親切に応対してくれ、白馬ロイヤルホテルを紹介してもらった。

今夕はレストランが予約客で一杯との事で、街(村?)に繰り出し駅前の居酒屋「花舎」さんに引っ掛かり、馬刺しや刺身、お酒は信州安曇野の地酒大雪渓を賞味し、大いに満足した下山祝いだった。

     
       白馬ロイヤルホテル
                        綺麗な室内

     
         レストランの朝食
                    本館とレストランを繋ぐ地下道

 
                   八方へとハンドルを向ける

帰りに八方方面にハンドルを向けた時、山頂は雲で覆われていたが、雲が流れた一瞬、うっすらと雪化粧をした白馬岳が見えた。 
北アは秋から冬の装いに変わり始めている。