第三日目(8月15日 晴れ)


 どうしても眠れない! 
無理して目だけは閉じているがサッパリ眠れない!
3時頃には眠るのを諦めてラジオをつけた。 走っている時には全然スイッチを入れていない
のでオールナイトニッポンなど、都心からの声を聞くと懐かしい気がする。
夜明けが近くなるにつれ寒くなってきたので、シュラフにもぐったまま座り込んで朝を待った。
5時頃明るくなってきたのでテントをたたみ、高遠の町を見下ろす所で写真を撮り、早朝の爽や
かな空気の中ペダルを踏んだ。
 高遠町から伊那までの9qは下り坂だ。 少し肌寒い。
30分程で伊那に着き、スタンプを押してR153に出た。



R153は天竜川沿いに通っていて、右に中央アルプス駒ケ岳連山、左に南アルプスを控
え、実に爽快だ。 道は川沿いだから当然下りだ。 でも、ず〜と遠くまで見えているので気が
滅入ってしまう。 しかしR153は路面状態も良く、時々上りがある以外は快適な走行が出来
た。 途中、駒ヶ根の駅でスタンプを押し飯田には9:57に着いた。
 「やった〜、今日の目的達成!!」
今日の目的とは、飯田に10:00に着く事だ。 10:00に着けば今日の寝ぐらの木曽には歩きで
山を登っても着くと思ったからだ。
早速、駅の観光案内で路面状況を尋ねたが、当初の予定していた神坂峠を越え馬籠に下る
道は林道(地道)らしく、オッサンが言うに「俺は保障しねぇ〜」とのこと。
                          (たぶん現在は舗装路になっているでしょうね)
それで、仕方なくR256を通り清内路峠を越え妻籠に下るコースをとった。
このコースだと越える峠の標高が予定の神坂峠1595m清内路峠1192mと、楽して木曽
は行けるが妻籠に降りてしまう。
「こりゃ次の日が大変だな〜」と思いながらも、早くも木曽の宿場町風景に心を
躍らせ気が急いてくる。
飯田では、まだ食べていなかった朝飯も兼ねてカレーライスとチャーハンを食べた。
テレビでは久々に見る高校野球をやっていて・・・
「くやし〜いっ! 桐生が負けた〜」。
                 (当時何故か、桐生高校の木暮君というピッチャーのファンだった)
食堂を出てジュースを2缶とチェルシーアーモンドを買って、峠越えの準備完了!11:30。
 駅前を通り中央高速の下を二度三度潜り抜け、名古屋へ通じる今まで走っていたR153の
州街道と別れ、いよいよ木曽に通じるR256との分岐の駒場(こまんば)には0:18に着いた。

 「アツイ、 アツ〜イ、 アヂ〜ヨ〜!!」
 ・・・文字で書くとこうなる。

「夏だから暑いのか?暑いから夏なのか?」
 ・・・とバカげたことを考えながら、ひたすらペダルを踏む。
 
とにかく、駅から峠までは27qもある。 長丁場とは解っていてもきつい!
灼熱の太陽の下、前なんか見ないで、横のガードレールや白線を見ながらひたすら走る。
どの位、走っただろうか? ふと横を見ると神社がある。
「諏訪神社だ!!」 この名の神社は上清内路下清内路の両方にある。
「どっちだろう?・・・・やったぁ〜♪♪
この神社は上清内路の方だ! 峠まではもう一息だ!
時間は充分あるので神社に寄って休憩した。
石段を登ると子供が2人遊んでいた。 小学生の男の子と女の子だ。
何故2人っきりで遊んでいるのかと聞くと近くには友達がいないのだそうだ。
奥まった部落だと同級生も少ないらしい。 なるほど、たしかに家々は5〜6軒ほどが固まって
あるだけで、山の裾に散らばっている。 だから学校へはスクールバスが各部落で生徒を拾っ
て行くのだそうだ。
峠も近いので、子供達にジュースと飴を分けてあげ出発した。
 七々平というバンガロー村を過ぎ、峠の茶屋を過ぎ、カーブを数回重ね前方にトンネルが見
えた。



 「やった〜!! 清内路峠だ!!」 時刻は14:23。
休憩を除いて計算すると約1時間半で27qを上ったことになる。
    (今では考えられない! とうに無くした若さと体力がうらやましい・・・)
山こじが峠のトンネルの前で感激に浸っていると、その横をマイカー族が涼しい顔をしてトンネ
ルを抜けていくではないか。 中には汚い格好をあざ笑っているような・・・。
 「フン!! 
  お前らにこの感激がわかってたまるか!!」
    (若いとはいえ、だいぶ閉鎖的な性格をしている・・・)
写真を撮り、さあ〜いよいよ妻籠宿への下りだ。
途中、車が混雑していた。 上りと下りの車が狭い道なのに譲り合いが上手く出来ていないか
らだ。
途中、R256が2つに分かれていたが地元の人に道を尋ね、蘭(あららぎ)部落を通る旧道を
走った。 14:50ついに来ました妻籠宿!!

 早く・・・早く、あの風景を見たい!と、逸る気持ちを抑えながら、ハイカーと
同じ速度でゆっくり進む。 やっぱり江戸時代の宿場の雰囲気を残した良い所だ。
観光案内所によってガイドを貰い、しばらく歩くとサイクリスト発見!
「何処から来たんですか?」と話かけたら、もう友達だ。
サイクリング仲間はいいな〜♪♪
 彼は大阪から来た人で年齢は25歳以上だと言っていた。
彼に出会って数分もしないうちに雨が降ってきた。 二人揃って、再び観光案内所に行き宿を
探してもらい、 夏の観光シーズンの真っ只中なのに、なんとか宿がとれた。 
民宿さかもと屋さんのお世話になった。
                             (その節は無理を言って済みませんでした) 
木曽は当然観光地なのでキャンプ場などは無いのだ。
 宿に着き、旅装を解くと、すぐに夕食になり、何日振りかの風呂になった。
まだ陽も高く、いつもならまだ走っている最中だから変な気分だ。
夕食後は荷物の整理をしたりして時間を潰していたが、夜になって雨があがったので行動開
始だ。 外に出ると、今日は木曽の盆踊りで賑やかだ。 盆踊りを見ながら、縁台に腰をかけ
休んでいるおばあさんと話をした。 なんでも、妻籠には50軒あまりの民宿があるらしい。 す
ごい!と感心してしまった。 さすがは観光地だ。 でも昔の宿場町のたたずまいは最高だ。 
                             (宿場町の保存のご苦労を感じます)

妻籠の夜は早い? 街灯が無いのだ! 
          宿場町の風景に街灯はありえない! 
だから、宿の窓から外を見ても真っ暗!・・・。
宿場町の風情を壊さぬようにと電柱も電線も無いのだ。
民宿に戻り、相部屋となった松本さんと旅の話をしながらビールを飲み妻籠の夜は更けていく
のであった?!
本日の走行 105.5q

第四日目へ続く



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